2021 Fiscal Year Annual Research Report
Pastoral Changes under CAP in a Transylvanian Mountain Village
Project/Area Number |
17K03311
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
杉本 敦 岡山商科大学, 経営学部, 准教授 (70712256)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 共通農業政策 / 伝統的牧畜 / ルーマニア |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度までのフィールド調査、および文献調査を通して、当初に必要と想定した資料の大半を収集することができている。ルーマニア・トランシルヴァニア地方の山村を対象としたフィールド調査では、EUの共通農業政策が村レベルでどのように周知、実施され、どのように受容されているのか、あるいは抵抗、無視されているのかについて、聞き取り、および直接観察を行った。文献調査では、共通農業政策をめぐる政治的格差、特にルーマニアのようなEU新規加盟国の地域的特性にほとんど注意が払われていない状況、一方的なEU基準の導入が推進されている状況について把握した。 前年度に引き続き、収集したデータの整理、分析を進め、トランシルヴァニアの伝統的牧畜の変化の方向性について検討を行った。後継者不足により、高齢者の牧畜農家が規模を縮小する、最終的には消滅に向かう一方で、以前からの大規模農家、特に若年層の中に、そうした土地を貸借して経営規模の拡大を目指す人びとが登場している。規模拡大によってより多くの助成金を受給し、それを元手に機械化、商業化を推進する傾向が見られる。生産スケジュールや土地利用に関しては伝統的な方法を維持しているものの、畜群管理や畜産物生産の過程に関しては経済的合理性や効率を優先する行為が見られることを明らかにした。 また令和3年度は、労働の目的と意味、自律性という視点からの分析にも注力した。共通農業施策からの補助金受給に関わる生産規模と生産性、動物福祉、食料生産の安全性といったEU基準は、社会主義時代においても維持してきた労働過程のイニシアチブに対する切り崩しと農家は捉えており、それを拒否したりごまかしたりすることで、労働過程をコントロールしようとする態度が見られた。
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