2018 Fiscal Year Research-status Report
Judicial Policymaking in Japan and the United States
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17K03320
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
秋葉 丈志 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (80453009)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政策形成型訴訟 / 憲法訴訟 / 司法過程論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2017年度に刊行した拙著『国籍法違憲判決と日本の司法』において事例研究を行ったところの、日本における政策形成型訴訟と司法の役割について、より多くの事例について調査を積み重ね、かつ日米比較の観点を取り入れることで、さらなる一般化と理論的貢献を目指すものである。 当年度の研究は、諸般の事情により米国における聞き取り調査を実施することができなかったが、以下の7つの事例について、後述する情報を体系的に収集した。日本については、1)LGBTの権利、2)一票の格差訴訟、3)再婚禁止期間を巡る訴訟、4)夫婦同氏制を巡る訴訟、5)婚外子差別を巡る訴訟。アメリカについて、6)LGBTの権利、7)選挙区割(partisan gerrymandering)を巡る訴訟。 以上の事例について、基本的に以下の情報を収集・整理した。1)訴訟の経過・判決、2)原告・原告団に関する情報、3)代理人(弁護士・弁護団)に関する情報、4)支援団体に関する情報、5)判決に関係する裁判官に関する情報(当該事件に限らず、司法審査への姿勢全般に関わる情報)。以上は司法の側に関する情報である。次いで、6)政府の対応、7)立法府の対応(政党や当該問題に熱心な政治家の動向を含む)、8)世論・メディアの論調、9)研究者の論稿、10)諸外国の動向。以上は司法との関係、種々の力学を経て、司法に影響を与えうる要因に関する情報である。 先般の著書においても、こうした情報をもとに、「社会の中の法」「人が動かす(ダイナミックな)法」という観点で、法・政策の変化と司法の役割について考察しており、当年度に収集した情報は、同様の分析を今後効果的に行うために大変有用・不可欠のものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日米における聞き取り調査を実施することが今年度の目標だったが、諸般の事情により、主としてこれ以外の文献データを(体系的に)収集することとなった。また、論稿を寄稿した共著の刊行が遅れるなど、年度内に限って見れば、成果が表に見えない年となってしまった。 しかし、当初計画に沿って、必要な分析を行うためのデータを揃えており、かつ既に次年度においては、国内外の学会・研究会での発表、また学会誌への寄稿が内定しており、聞き取り調査の実施と合わせて、遅ればせながらも構想していた研究を遂行できる見込みである。従って、「やや遅れている」という自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
当年度に実施予定だった日米における聞き取り調査を確実に実施するとともに、すでに報告の決まっている国内外の学会・研究会での発表や、学会誌への招待論文を着実に書き上げ、成果を上げていきたい。基本的には、聞き取り調査は年度内に済ませることを目標としたい。 その際、研究時間の確保や地理的制約(聞き取りの対象が都内に集中している中でのアレンジの難しさ等)が課題としてあったが、所属機関の異動に伴い、この点は解消できる見込みである。 なお、全体的な成果を論文や著書にまとめるのは、次年度以降となる見込みであり、この点は当初の研究計画より1年程度ずれ込みそうである。しかし、多少の時間はかかっても確実にまとめる所存であり、前回の著作に続く、単著として成果を刊行する意志に変わりはない。
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Causes of Carryover |
前述したように諸般の事情により当年度、海外における聞き取り調査が実施できず、そのために計上していた海外渡航(航空券代・宿泊費)費用複数回分を支出しなかったこと、これに伴い当該調査に際して支出予定だった謝金についても支出しなかったことが、次年度使用額が生じた主たる理由である。 当該聞き取り調査については次年度に持ち越して行うことになる。次年度の請求額と合わせ、より長期のまとまった出張を行い、米国の複数の都市を連続訪問して調査を行うことなどが可能になる。このように、繰越額を活用したより充実した聞き取り調査を実施したい。 また、異動先の研究機関は関連する研究に従事する大学院生も多く、人件費を活用して、有益な研究協力(文献収集、録音データ書き起こしなど)を得たい。
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