2021 Fiscal Year Research-status Report
Judicial Policymaking in Japan and the United States
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17K03320
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋葉 丈志 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (80453009)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 政策形成型訴訟 / 同性婚訴訟 / 司法過程 / 司法政治 / 憲法訴訟 / 法の下の平等 / マイノリティの権利 / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
各地で同時提起された同性婚訴訟は2020年度はコロナ禍の影響を受けて訴訟の進行が遅延したが、本年度は若干ペースを取り戻し、各地で頻繁に期日が入った。これらの動きについて訴訟の準備書面などをフォローしつつ、法廷傍聴やオンライン報告会にも参加した。そして研究の一環として、各地の訴訟の原告代理人への聞き取り調査を続けた。訴訟提起後の早い段階で聞き取りを行った原告代理人に対して、訴訟がより進行した今年度の段階で2度目の聞き取りを行った場合もある。また、年度後半には、原告代理人に限らず、より広く当事者や支援団体の方にも聞き取りを行いたいとの問題意識を強め、予備調査や予備作業を経て、まずは3人に計4回の聞き取り調査が実現した。 これらの聞き取りの成果の一部をまずは2022年5月に予定している日本法社会学会の学術大会での報告に取り入れ、その後の論文化や書籍化へつなげていく予定である。 なお同性愛者への雇用差別禁止法制の適用を巡るアメリカ合衆国最高裁判決について執筆した判例紹介が年度末(22年3月)に出版されたほか、「一票の格差」について、日米比較を行う際に必要な様々な視点について分析した論稿が年度内(21年12月)に出版に至った。 また学会においても、2022年5月の日本法社会学会の学術大会の企画委員に加わり、今般の同性婚訴訟についてのパネルを提案し、実務家、実定法学者、そして法社会学者の対話を通じて訴訟の意義や司法過程、法のあり方について多面的に問う試みを展開しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画は2019年度までだったが、アメリカへの渡航調査が遅れていたため、2020年度に延長をした。ところがその2020年度、そして再延長をした2021年度とも、コロナ禍により渡航が禁じられ、渡航が一度も実現しなかった。このためアメリカ側の事例研究が遅れている。また、日本国内の事例研究も、上述したようにそれなりの意義深い進展はあったが、同性婚訴訟のケーススタディにエネルギーを費やす一方で、予定している他のケースの事例研究については「一票の格差」に関する予備的論稿を執筆したものの全体として遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカ、日本を含む各ケーススタディのうち遅れているものについて、訴訟当事者や原告代理人等、誰がキーパースンに含まれるかについては、研究開始当初からの文献による予備調査で、ケースごとに概ね整理してある。海外渡航・国内出張ともにようやくコロナ禍に伴う規制が緩和されたので、今年度は精力的にこれらの人物への聞き取り調査を敢行したい。もし渡航による調査ができない場合、次善の策として、オンラインでの聞き取りを行うこととしたい。 また、先述したように、2022年5月に日本法社会学会の学術大会で、この間の聞き取り調査の成果を取り入れた報告を行う予定であるが、これを皮切りに、論文化・書籍化へ向けた取り組みを強めたい。特に論文化においては、査読付きの学術誌に寄稿すること、また英文により外国へ向けて日本の事例を発信する試みもしていきたいと思っている。 まずは所属大学の研究所の英文紀要で、今般同性婚訴訟について、最初の判決となった札幌地裁判決を中心に紹介する論稿を執筆することになっている。国際学会での報告も今年度中に応募することを目標にしたい。
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Causes of Carryover |
研究計画記載の通り、コロナ禍により、2020年度、21年度の2か年に渡り、海外渡航・国内出張ともに一度もできず、アメリカでの聞き取り調査を行っていない。2022年度に入ってから規制が緩和されており、2022年度はこうした出張による聞き取り調査、研究交流に予算を使用したい。
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