2018 Fiscal Year Research-status Report
多元的・多層的解釈の統合としての「憲法解釈」の基盤構築
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17K03352
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大河内 美紀 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (20345838)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ディパートメンタリズム / ポピュリスト立憲主義 / 対話的憲法理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
合衆国における、市民を担い手とする憲法解釈について検討を進めた。合衆国においては1990年代以降、憲法解釈のレベルで「市民」あるいは民主主義を強調する理論潮流が登場してきている。具体的には、権力分立に基礎をおきつつ非司法機関による憲法解釈を重視するディパートメンタリズムと「人々」それ自体が最終的な憲法解釈権を有するとするポピュリスト立憲主義という2つの理論潮流である。しかし、これらには反司法優越主義という共通性と同時に、「市民」と憲法解釈との関わりのレベルにおいて、重要な相違が存在する。そこで、それぞれが具体的にどのような形で「市民」と憲法解釈レベルでかかわりを持っているのかに着目し、その異同を明らかにすべく、検討を進めた。 他方、日本の憲法学は、これまで「市民を担い手とする憲法解釈」に関する包括的な研究を行なってきていない。しかし、対話的憲法理論や憲法改正と「世論」に関する近年の政治学的分析など、合衆国の諸議論と共通する問題意識によってなされた先行研究が存在する。そこで、合衆国の諸議論の日本における適用可能性を探る前提として、これらの先行研究における憲法解釈のレベルにおける「市民」の関わり方を明らかにし、その到達点と限界を探ることを試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
30年度までの研究の成果は、論文の形で公表に至っている。また、その前後に、日本および国外(モンゴル)において複数の研究会で準備報告の機会を設け、貴重な意見交換を行なうことができた。 なお、合衆国で資料収集または研究会を機会を持つことを当初は予定していたが、スケジュールの関係でそれは叶わなかった。しかし、日本国内におけるアメリカ憲法研究者のネットワークを活用することで、国内での研究会においても充実した議論を行なうことができた。また、モンゴルにおける研究会では、欧州・アジアにまたがる6カ国以上の憲法研究者と議論を行なうことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度までに進めてきた研究をふまえ、より具体的に、非司法部門における多元的・多層的な憲法解釈の方法論の構想をまとめる。 その際、国内外の文献研究を引き続き行なっていくほか、合衆国での資料収集または研究会を機会を探りたい。
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Causes of Carryover |
前年度に予定していた海外調査その他が実施できなかったため、本年度にその分を上乗せして使用計画を立てた。本年度については、おおむね計画通り研究を遂行することができたものの、前年度に予定していた分を消化するには至らなかった。そのため、次年度使用額が発生した。
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Research Products
(2 results)