2020 Fiscal Year Research-status Report
持続型・縮退型社会における都市行政の費用負担のあり方に関する研究
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17K03361
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田尾 亮介 東京都立大学, 法学政治学研究科, 准教授 (50581013)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アカウンタビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究課題の4年度目にあたるところ、公表された研究業績としては研究発表欄記載の雑誌論文3件がある。 1件目は、昨年度執筆した学会報告論文に大幅な加筆、修正をし再構成した論文である。アメリカ、ドイツの各州法の内容をもう一度再点検して、アメリカ法、ドイツ法の部分を補強した上で、イギリス法についても新たに取り上げ、日本法の部分についてもより考察を深めた。所属研究機関が刊行する紀要に連載形式で発表する予定であり、第1回の原稿はすでに投稿済みであり、今後校正作業が終われば、第2回の原稿の補正作業にとりかかる。 2件目は依頼論文である。オリンピックの費用負担と都市行政というテーマを与えられたが、本研究課題と目的が合致すると考えたため執筆を引き受けた。オリンピックの利害関係者をめぐる構図は複雑であるが、アカウンタビリティをキーワードに、開催都市である東京都はその構成員である東京都民に対してアカウンタブルであるかという問題意識をもとに、プリンシパルである東京都民とエージェントである東京都の間に情報の非対称性があり、かつ、エージェントである東京都が、プリンシパルである東京都民以外の利害関係者の影響を受ける場合には、予算の高騰は避けられないという結論を導いた。また、本稿では、大規模スポーツイベントにより他の公共性の高い事業を縮小せざるを得ないという機会費用の問題や、会費や寄附により地域スポーツという文化を支える方途について外国の議論を参照しながら検討した。 3件目は判例評釈である。公務員の懲戒処分に対する裁量審査のあり方を検討したものであるが、議論が錯綜する行政裁量論の中で裁量審査手法を整理し、事案に即した的確な指摘ができたと考えている。 以上が本年度の研究の具体的内容であるが、当初の研究目的からやや逸れつつある。次年度以降は当初の研究目的に立ち返りつつそれ以上の収穫を得るよう努める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も遅々とした歩みではあるが、昨年度に執筆した論文につき不十分な点を補い、新しい視点を加えた研究論文を投稿することができた。次年度も本研究課題に関連する論文の執筆や研究会発表の依頼を受けており、現在はそれらに向けた準備を進めている。これらの状況を勘案すると、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の問題意識はすでに大部分の公法学者によって共有されているものであり、特に新規性のあるものではなくなりつつある。今後は、どのような主体がどのような形で都市を管理運営していくための費用を負担していくかということを、国内外の事例を参照しながら具体的かつ緻密に考察して本研究課題の完成年度を迎えることにする。
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Causes of Carryover |
本年度はさまざまな理由で研究活動に充てる時間が乏しく、そのために未使用額が生じた。本年度に生じた未使用額は僅かであるため、次年度の文献調査に充当する予定である。
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