2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03364
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
棟居 快行 専修大学, 法務研究科, 教授 (00114679)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | プライバシー権 / プライバシー / 自己イメージコントロール権 / SNS / 公共空間 / 忘れられる権利 / 検索エンジン / 親密圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
FacebookやTwitterなどの代表的なSNSが、それぞれ独自のプライバシー概念を基礎とする私人・間の個人情報の選択的開示の構造を備え新しいソーシャルな関係を生み出し続けているが、本研究はSNS時代におけるあるべきプライバシー保護法制を構想することを目指している。平成29年度は、SNS上のプライバシー権保護に適合的なプライバシー(権)概念を模索した。方法としては、SNSの代表例であるFacebook、Twitterにつき、それぞれについてどのような個人の表出の仕方をその基本設計としているか、について検討した。かねてからの私見である「自己イメージコントロール権」としてのプライバシー権が、Facebookにおいては拡大された疑似親密圏として、Twitterにおいては分節化された疑似公共圏として構築(アーキテクト)されているという暫定的な結論に至り、「プライバシー権の来し方・行く末」(工藤達朗ほか編『戸波江二先生古稀記念 憲法学の創造的展開 上巻』信山社、2017年12月397-421頁)にその基本構想を発表した。また、ドイツのプライバシー権研究の最前線を、現地での専門家との意見効果を通じて確認するため、2017年10月4-6日にドイツ・ザールブリュッケン大学法学部で開催されたドイツ国法学者大会に参加し、ドイツ連邦憲法裁判所裁判官ヨハネス・マージング氏(フライブルク大学法学部教授を兼務)、およびオリバー・レプシウス教授(ミュンスター大学法学部)からドイツのSNSとプライバシー保護につき、フェイクニュースなど民主制ともかかわるとの有益な示唆を得た。いわゆる検索エンジンによるプライバシー侵害については、「検索エンジンと『忘れられる権利』の攻防」(法学教室2017年6月号46-51頁)を発表した後も、情報の公共性と時間の経過という観点から考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SNSの興隆が引き起こしているあらたなプライバシー問題をきっかけとして、憲法上のプライバシー権保護(あるいは民事の人格権としてのプライバシー権の保護)をインターネット社会のなかでいかに構想すべきか、という大きな目標の初年度として、Lineは研究対象にできなかったがFacebookならびにTwitterにつき、それぞれ社会的に注目される展開を示したことから、考察の素材とすることができた。また、ドイツでの学会参加の際の有力研究者との議論により、SNSが有する公共空間および民主制への悪影響をアーキテクチャーの規制でどのように担保するかという視点の重要性を再認識したため、プライバシー権保護を人格権保護の観点ばかりでなく、情報の公共性という逆の側の観点からも構想する必要があると感じた。
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Strategy for Future Research Activity |
FacebookやTwitterのようなSNSのみならず、検索エンジンもまた個人のプライバシーをインターネットのなかでどのように保全すべきかの素材として重要であることはいうまでもなく、検索エンジンの犯歴情報の削除請求などはわが国ですでに裁判例が積み上げられてきている。このような事象についても考察の対象に加え、インターネット全体の個人法益および公共空間の質の確保のベストバランスがどこにあるか、という観点から課題を再検討しつつある。
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Research Products
(1 results)