2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03364
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
棟居 快行 専修大学, 法務研究科, 教授 (00114679)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多元性としてのプライバシー権 / 科学技術によるビッグデータとプライバシー権 |
Outline of Annual Research Achievements |
・海外出張として、2018年10月2日出国(羽田空港ーフランクフルト空港ー鉄道にてボン)、同10月8日帰国(鉄道にてボンーフランクフルト空港ー成田空港)の往復でドイツに行き、ドイツ国法学者大会(公法学会に相当。3,4,5日の3日間にわたり開催され、6日は日帰りのバス旅行による国法学者大会会員の意見交換)に傍聴人として参加した。 ・同学会では、3日間のうちの2日目および3日目に「平等と多様性」「科学技術と医学の変化における法的対応」という大きなタイトルの下に、多数の報告者の報告と質問がなされた。 ・科研費に基づくドイツ出張として、プライバシー権を含む個人の人格的自律権が、単に自己情報保護に終わるものではなく、個人の多様な自己決定権がどこまで・どのように平等保障の対象とされるべきか、また科学技術や医学の進化に伴い個人の人格的自己決定権を個人の選択権どまりに終わらせず、技術的医学的な観点からの個人情報のビッグデータとしての拡大にどのように及ぼすべきか、など、プライバシー権のさらなる発展形態およびそれを取り巻く最新の技術革新が取り込まれてきた。 ・同学会の初日の自由な論争はベルリン大学のメラース教授を中心に、私が科研費でドイツ出張により情報取得を考えた者としては、議会と憲法裁判所でどのような人権擁護の活動がなされるべきかについて単なるプライバシー保護にとどまらない発展可能性を受けた。また、最終日においては、ミュンスター大学のレプシウス教授から、憲法裁判所の人権保護が事案の類型をより細かく考えるべきであるとの本人の論文解説について平易な説明を得て、プライバシー保護と事案の類型化との関係についての有益なテーマを得た。 ・国内出張として12月1日に大阪でファン教授(台湾国立研究所)によるドイツ憲法学をベースにした制度理論と人権論の関係についての報告を聞き、12月2日に帰宅した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プライバシー権を多様な社会関係およびビッグデータによる分析の物理的可能性を広げている科学技術の下において、どこまでどのように進展させるべきか、という問題関心にとり、今回のドイツでの国法学者大会はきわめて先鋭的な諸報告を含むことを知り、実際に現地で議論を聞くばかりでなく参加者から意見を聞くなどすることにより、プライバシー権をとりまく社会的および科学的環境の大きな変化を知ることができた。わが国においても、プライバシー権の進捗状況にとり、現在の社会環境や科学技術の変化を詳細に知る必要があると認識し、今後の具体的展開を方向づけるものと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度のドイツ国法学者大会での聞き取りおよび思考の進化により、プライバシー権の発展可能性にとり社会現象の変化、および科学技術の進展というプライバシーを取り巻く周辺状況の認識を深める必要を痛感した。そこで、今年度は、目的としてのプライバシー保護にとり、最新の社会関係および医療技術の進化が個人の自己決定権をどのように変容させているのか、という観点から、文献収集を強めていくこととする。同時に、社会現象や科学技術の発展のなかにあって、プライバシー保護が単なる個人情報の選択的提出にとどまるものではなく、個人の人格的自律がどのように決定されるか、というプライバシー論の基礎理論にも視野を広げる必要があると考えるので、国内のインターネットによる個人情報の開示をめぐる裁判記録なども視野に入れ、各論的にプライバシー保護のインターネット社会における可能性にも研究を推進することとする。
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Causes of Carryover |
当該年度につき、アイヌ法研究の文献がわが国のプライバシー権をめぐる社会関係の一例となると考えていたが、そのような研究文献の資料収集の具体的な目的としてどのような研究対象をどのように考察しうるのか、なお特定できないため、次年度に文献収集の時期がずれた。次年度においては、北海道大学がアイヌ法研究について調査研究をすすめていることから、プライバシー権との関係でどこまで・どのようにアイヌ研究を行うことができるかを調べ、適切な文献収集を行う。
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