2019 Fiscal Year Annual Research Report
地方公共団体の企業的活動に対する公法的規制の理論とあり方
Project/Area Number |
17K03369
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田村 達久 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60304242)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 企業的活動の継続性 / 地方公営企業 / 再公営化 / 公共私ベストミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
日本における今後の地方公共団体における企業的活動に対する公法的規制のあり方・理論を考察するために、交通系地方公営企業(鉄道事業・自動車運送事業)の関係労働組合等の資料等を用いて、当該役務提供に従事する者の処遇を含めた持続的な役務提供体制の維持・構築に係る運用実態及び法制度を検討した。その結果、例えば、当該処遇に関しては、労働法制的側面の課題も同時並行的に検討、考察することが重要かつ不可欠であることが明確となった。同様の諸課題は病院事業についても生じており、後述する公私の最適組み合わせ(ベストミックス)の考究が緊要であることが浮き彫りになった。医療介護総合確保推進法に基づく地域医療構想の策定において、地域医療体制の中核的な役割を担うと考えられている公的病院が民間病院の補完的な機能を営むことが意図され、とりわけ中小規模の公立病院は、地域によっては特定機能(高度医療)に特化しない多機能型の病院へと転換してべきとの認識が民間にも存在することを強く意識した上で、その公法的規制のあり方・理論を考究すべきであることの重要性が明らかとなった。くわえて、ドイツ連邦共和国における企業形態による地方公共団体の公共役務の調達・提供に係る法的問題の理論的考察を行って比較法研究を進めた。この結果、とりわけ公企業形態の選択可否の法的判断基準や、民営化された事業領域の再公営化の可否の法的判断基準を日本の法制の中でも同様にかつ迅速に考究すべきことの重要性も明確となった。 これらのことに鑑みれば、今後の日本の「縮小する社会」における公共的諸課題の一つである地方公共団体の企業的活動の持続可能性の維持のあり方を、地方公営企業の性質的類型、つまり、企業的活動の類型毎に、公私又は公共私の最適の組み合わせ(「公共私ベストミックス」)の考えをも参照して継続して研究していかなければならない。
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