2020 Fiscal Year Research-status Report
Considering Adequate Legal Models for International Cyber Currencies
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17K03392
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
久保田 隆 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (50311709)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | デジタル通貨 / 暗号資産 / 仮想通貨 / 資金洗浄 / 通貨主権 / 有体性 |
Outline of Annual Research Achievements |
仮想通貨(暗号資産)やデジタル通貨を巡る私法と②公法上の論点の国際相互連関を明らかにし(第1段階)、国内外の文献調査や実務家・学者との議論を通じて検討を深め(第2段階)、新興国等を含む諸外国が立法の際に参照可能な仮想通貨法制の統合モデルや国際社会が採り得る対策について提案する(第3段階)ことを狙いとする。 2020年度は第3段階を中心に展開し、数本の著書・論文を公刊し、(1)国内では9月19日に国際取引法学会全国大会、10月25日に国際商取引学会全国大会、3月28日に国際取引法学会国際契約法制部会で各々オンライン報告し、(2)海外では10月6日に国連国際商取引法委員会の会合、11月28日に国際法協会通貨法委員会(MOCOMILA)で各々オンライン報告して各国専門家と意見交換した。 本研究の集大成をなすのは、2020年度公刊論文のうち、①「デジタル化された通貨間の競争と通貨主権」国際商事法務48巻10号と②「通貨主権を馬われず、競争に勝つためのCBDCの議論を進めよ」金融財政事情2021年2月8日号の2作であり、①で「統合モデル」を提案し、②で国際社会の採り得る対策を提唱した。最終年度となる2021年度には、これらをさらに深めた日本語論文1点(校正終了)と英語論文2点(最終校正中)の刊行を予定している。 一方、コロナ禍に伴い、当初予定した企画のうち、(1)国内の学際シンポジウムは2021年6月5日、9月16・17日、11月5日に延期してオンライン実施することを余儀なくされ、(2)海外学会は中止(中日民商法研究会)や集約・オンライン化(MOCOMILAの3回の会合が1回のオンラインに)の憂き目に遭った。今後もオンラインを活用して研究活動を進めて参りたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理由 新型コロナ肺炎が未だ終息しない中、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が稼働するなど当初予想よりも事態が急展開したため、研究も深化できた。国内外の論文公表や学会報告を通じて専門家の知己を多く得、当初計画以上に研究を進展できた。 私法関係では、CBDCや暗号資産を巡る裁判例等が出揃い、CBDCのデジタル情報が民法85条にいう有体性を満たすかという論点が浮上した。この問題は2020年度の国際取引法学会で報告・討議したが、2021年度も日英論文や学会報告を予定している。他方、公法関係では逸早く稼働したカンボジアのCBDCは、現地通貨に加えて米国の承認を得ずに米ドルを発行する点に注目し、米国の通貨主権を阻害しないかをドル化に関する先行研究に照らして検討した。逸早く2020年度のMOCOMILAや国際商取引学会等で報告・討議し、英語論文2点を仕上げ、現在は校正中である。 ちょうど所属するMOCOMILAや国際経済法学会で英語の学術書刊行プロジェクトがあり、それにうまく載せられた。また、国際商取引学会で会長、国際取引法学会で国際契約法制部会長の地位にあり、シンポジウムが組み易かった。さらに、位置にありに本研究が目指す国際枠組み作りに近い動きが国際的にも進行中であった点も幸運に恵まれた。 他方、コロナ禍により、緊急事態宣言下にある現在は、国際学会はもとより国内学会も開催できず、研究活動は対面が困難で、自宅でインターネット中心にならざるを得ない。そこで引続きZoom等のオンラインツールを駆使した学会・シンポジウム運営やインターネット・リサーチの拡充によって対処する方針である。また、資金洗浄対策に関するFATF第4次対日相互審査の結果発表が遅れた結果、オンライン・シンポジウムの開催期日も2020年度から2021年11月5日に延期するなど、外部要因にも左右されるが、不屈の精神で前進したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、まず研究の集大成をなす内容について、(1)日本語論文(「暗号資産・デジタル通貨の有体性と通貨主権」)を国際商事法務で2021年6月に刊行(既に校正完了)し、(2)英語論文2点(①Japanese and International Law Developments of Crypto and Digital Currenciesと②Monetary Sovereignty in the future CBDC global competition: A Japanese Perspective)を、①をMOCOMILA編でOxford大学出版局から、②を国際経済法学会編でRouteledgeから2022年刊行予定の書籍に掲載予定である。 一方、学会報告は、既に(3)5月29日に日本金融学会でのオンライン報告・討議(CBDCの通貨主権)、(4)6月5日に国際商取引学会と早稲田大学比較法研究所のオンライン・シンポジウムでの報告・討議(CBDCや暗号資産、マイナンバーカードの法的・暗号学的検討)を、(5)6月11-12日にフランクフルトで開催するMOCOMILAでの報告・討議、(6)9月10-12日に北京で開催する中日民商法研究会での報告・討議(日中比較)、(7)9月16-17日に早稲田大学比較法研究所のオンライン日中シンポジウムでの報告・討議(日中比較)、(8)11月5日の国際商取引学会オンライン・シンポジウムでの報告・討議(暗号資産の資金洗浄対策を含むFATF第4次対日相互審査結果の検討)を予定しており、各々の成果物も国際商事法務や学会誌等で公表していく予定である。また、これ以外にも適宜、報告機会を増やしていく。なお、(5)(6)は対面かつ海外実施のため、コロナ禍次第で開催できなくなるリスクがあるが、それ以外はオンライン実施なので、確実に開催可能である。
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Causes of Carryover |
発生理由:コロナ禍に伴い、当初予定した対面での国際学会報告や国際シンポジウムの開催が困難になった結果、オンラインに移行したが、それに伴い、当初予定した旅費等が浮いてしまった。 使用計画:コロナ禍次第ではあるが、仮に対面での国際学会や国際シンポジウムが開催可能であれば、それに伴う旅費等に充てることとし、開催が不可能であれば、(1)科研研究の成果を対外発信するための、論文英訳に伴う英訳費用、(2)論文や学会報告のためのリサーチ費用(書籍代、データベース利用代等)に充てることとしたい。
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Research Products
(11 results)