2017 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会におけるサービス保障の契約手法-英・コミッショニングの法的研究
Project/Area Number |
17K03407
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
国京 則幸 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10303520)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | NHSFT / NHS / ファウンデーショントラスト / 病院 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は、EU離脱の国民投票の影響など近時の状況を踏まえ、特に、(1)「病院」を中心に実態調査を行い、あわせて、(2)イギリスの医療保障モデルの特徴を整理し、医療のコミッショニングの基本構造を明らかにすることに着手した。 まず、実態調査については、サウサンプトン大学大学病院を核とするUniversity Hospital Southampton NHS Foundation Trust(UHS)を訪れ、臨床医や部門長(医師)、病院長などへのインタビューを行った。一部に指摘されていたEU離脱など政治状況による(人材確保・人材流出など)影響は特に感じられなかったものの、病院が直面する問題として、地域の高齢化の影響による様々な問題(いわゆる社会的入院など)が存在していることがわかった。また、今回の調査で、改めてNHSにおける病院の機能やそこで提供されている専門医サービスについての実態的理解が深まった(「紹介制度」の実際、病院医による「往診」、など)。 他方、イギリスの医療保障モデルについては、日本との比較を意識しつつ、「病院」を中心に整理検討を行った。これまで主として政策の中で言及されてきている「病院」を、①医療提供の場としての「病院」と、②NHS政策における「病院」とに分けて整理し、検討することとした。そして、①については、NHS以前の「病院」とNHSにおける「病院」について明らかにし、これがGP診療所とは異なる役割、位置付けを与えられてきていることを確認した。②については、NHSが創設され「病院」が保健当局(Health Authorties)に行政的に管理されていた状況から、NHSトラスト、NHS基金トラストに至る変遷を跡づけ、中央から地域へと病院の管理が移っていく過程と、管理手法の変化(行政的手法による管理から、病院関係者・地域住民の「参加」による運営)を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、コミッショニング検討の基礎に欠かせない、現在のNHSの基本構造や病院管理形態の変遷については整理、検討ができた。また、コミッショニングの一方当事者の一つである基金トラストの理解も深まった。ただし、基金トラストの詳細(組織構造や具体的な管理運営手法など)については、なお、訳語の確定を含め残された部分があり、この点については、引き続き研究を進めていく必要がある。また、医療におけるプライマリ・ケアとセカンダリ・ケアのコミッショニングの違いを明確にする必要があり、この点も継続して研究を進めていく。 これらの点から、平成29年度の研究計画であった医療のコミッショニング検討の基礎はおおむね順調に研究が進んでいるといえる。しかし、次年度以降の、福祉サービスのコミッショニングとの比較検討にはまだ十分でない部分があるため、30年度前半は引き続き医療のコミッショニングの検討を行う必要がある。 また、本年度の研究を通じて、新たに、地域医療という観点から、基金トラストの地域住民による「参加」という病院運営手法の存在、意義に気が付いたので、この点についてもそのしくみ等掘り下げて検討を行っていくことにする。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、主として、福祉サービスにおけるコミッショニングの検討を行う。 福祉サービスは、医療と同じ、サービス提供が中心であるが、イギリスでは、医療と福祉とは異なる論理としくみを持つものとして位置づけられてきている。一般に、医療-国(中央政府)-無料、福祉-地方―有料という対抗図式が成り立つ。ただ、平成29年度の研究で整理・検討を行った、NHSの近年の変化(地方・地域の重視-プライマリ・ケア、CCG、基金トラストなど)や、同じく平成29年度の調査で改めて明らかになった、「病院」が地域との関係で直面している問題の存在などから、従来のような単純な理解を前提に検討することはできないような状況になっている。 そこで、平成30年度は、平成29年度の医療のコミッショニングとの関係で残されている部分(基金トラストの組織機構、運営手法の把握など)の研究を進めるとともに、これと並行して医療サービスと福祉サービスとの異同を意識しつつ、現在の福祉サービス利用の法的構造を明らかにし、福祉におけるコミッショニングの特徴と内容を法的に明らかにする。また、渡英し、それらの実態についてもできる限り把握することに努める。 これら研究成果については、所属する研究会等で報告し、論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
資料整理のために確保予定だった学生の都合がつかず、資料整理の依頼をできなかったことによる。次年度使用額として繰り越す予算は、渡英調査研究費用または本年度の研究計画にある英国福祉関係文献・資料購入費(物品費)として利用予定である。
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Research Products
(1 results)