2017 Fiscal Year Research-status Report
「取引の公正」概念の基盤構築:ビッグデータの取扱いをめぐる競争的規制の比較法研究
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17K03414
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
井畑 陽平 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 准教授 (80467406)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 連邦取引委員会法 / 公正性 / データセキュリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、本研究全体に関する文献検索および収集を行った。 具体的には、年度前半は、わが国の審判決例の収集と分析に重点を置いて研究を進めた。わが国独禁法の違反要件は、抽象的に規定されている。したがって、データの取扱いをめぐる独禁法の違反要件に関わる解釈論を展開するためには、公取委により事件化された審判例や独禁法を根拠として提起された民事判決の収集・分析に加えて、個人情報保護法(及び関連するその他四法)やEコマースを規律する特定商取引法等を根拠として提起された民事判決の収集・分析も重要だからである。 年度後半は、公正性(fairness)をキータームとして、米国法を考察する上で必要な先例および二次文献の収集と分析に重点を置いて研究を進めた。とりわけ、米国における反トラスト法の1つである連邦取引委員会(以下、「FTC」という)法5条を根拠として消費者に対する「不公正な行為・慣行」を規制(禁止)している米国での先例を収集し、ともすれば経済的な効率性(efficiency)を過度に重視する傾向にあると考えられがちな米国において、「取引の公正」概念が先例においてどのように理解されてきたか、また、FTC法5条という本来は競争を規律する条文を根拠として、わが国でいう個人情報保護に近いデータセキュリティの問題に対してFTCが果たしてきた役割を中心に分析した。 FTCは、消費者に実質的な損害を与えるものか否かを最重要視して、多岐にわたる行為をFTC法5条に違反する「不公正な行為・慣行」として禁止し、規制しているため、上に述べた作業を通じて得られたわが国の先例とFTC法5条にかかる先例とを比較することで、各国法を個別に眺めているだけでは把握しにくい、「取引の公正」概念にかかる日米法の共通理解を抽出する作業を、平成30年度以降に行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」に照らして、現在までの進捗状況について、おおむね順調に進展していると自己評価した理由は、以下の通りである。 本研究が対象とする分野では、法規制、実務、そして研究面において、常に新しい動きがあることを考慮すると、検討の対象としていた制度的枠組みが大きく変容したり、あるいは、より重要な検討対象が生まれたりするという事態も想定される。このような事態に対しては、当該変容の過程で行われる議論や当該対象に関する外部での議論をも本研究の検討対象に取り込み、その適否を検討した上で独自の分析を進める。さらに、本研究を進めていく過程で、状況の変化によっては、外部の研究者の専門性を活用する等の必要が生じる可能性がある。こういった事態については、随時、必要となる専門性を持つ外部の研究者の協力を仰ぐなど、柔軟に対処する姿勢で臨んでいる。 平成29年度末の時点では、所属する研究機関を通じて、判例等の一次資料及び論文・著書等の研究課題に関連する二次資料について、必要なものを入手できている。また、公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)を構成する主に学者メンバーとの討論を通じて、研究を進めるに当たり取り組むべき課題やその対処方法の適正性についても担保できていると考えている。研究成果の一部については、公表することもできた。 当初の計画以上に進展していると評価しなかった理由としては、法執行機関の実務担当者への実地調査が平成30年度に持ち越された点が挙げられる。こちらについては、現在、鋭意、その実現に向けて交渉している途上にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の基本的な研究の推進方策とは、以下の通りである。 本研究課題にかかる研究遂行にあたり、3年間にわたる本来は1つの研究を複数の段階に分け、それによって、単年度ごとに研究成果が出るようにしたことである。すなわち、本研究は、3年間の研究期間を、第一期(平成29年度)、第二期(平成30年度)、そして第三期(平成31年度)に分けて遂行されている。 研究期間の各期を通じて、一定の成果が得られた各段階で調査報告という形で、複数の研究会において報告・発表し、さらにその過程で得られた知見をふまえて論文として公表し、それらに対する意見を積極的に求めるというやり方で進めている。こうすることで、そこまでの研究の客観的な位置づけをうるとともに、独善とならないよう十分に努め、次期の研究の方向性の適切さを担保できると考えている。 平成30年度は、年度を通じて、米国法及び日本法における「取引の公正」概念の相対化を図るべく、EU法について、公正性をキータームとして、必要な先例の収集と分析に重点を置いて研究を進める。具体的には、「取引の公正」概念の外延を検討するための素材として、EU機能条約にかかる先例を収集する。とりわけ、EU機能条約違反とされた先例のうち、消費者利益の保護の兼ね合いでデータの取扱いが問題とされたものを中心に分析する。二次文献については、EU競争法とデータセキュリティとの問題を論じた書籍(Federico Ferretti, EU Competition Law, the Consumer Interest and Data Protection (2014).)等に引用されたものを中心に分析したいと考えている。平成30年度を通じて行う研究の成果については、平成31年2月頃までに関西独禁法研究会等で報告し、その後の研究期間における研究目標の再検討に生かすものとする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として、61,938円生じた。これは、直接経費と間接経費とを合計した平成29年度に予定された総額の4.33%に相当する。おおむね、許容される範囲、すなわち研究計画に沿った執行ができていると考えている。
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Research Products
(5 results)