2020 Fiscal Year Annual Research Report
Data protection Law in the Criminal Procedure
Project/Area Number |
17K03427
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
丸橋 昌太郎 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (60402096)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 令状主義 / データ / サイバー |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、総括的な研究を行った。適法捜査担保型の理論的枠組みにおいて、もっとも重要な検討事項は、実体要件の設定であるところ、イギリスでは、基本的には、比例原則(必要性基準)が採用されているところ、わが国においても、刑事訴訟法197条1項が「必要な取調」とされていることから、必要性が実体要件となっているということができる。実体要件がこのように観念すれば、従来、刑事訴訟法上の違法基準と、国家賠償法上の違法基準との整合性が不明確であったところ、国賠法上の判例実務(公権力発動要件欠如説)と整合する理論構成が可能となったといえる。 そして、この実体要件を担保する仕組みとして、強制処分であれば原則として事前の司法審査、そうでなければ事後の司法審査(違法収集証拠の排除法則)、と位置付けるとすれば、大量のデータの入手等を任意捜査と位置付けて、事後の司法審査だけで規律するのは問題があり、個人情報保護法等に類似した保護法制の検討が必要となろう。 一方で、国をまたがる情報のやりとりが一般的になってきた現代において、わが国の法制に課題が見えてきた。クラウド等のサーバーにあるデータは、現行法上、差押代替措置として行うほかなく、差押代替措置は、当該端末を差し押さえた後は実施することができない立て付けになっている(横浜地判平成28・3・17判時2367号115頁)。このため、捜索の現場で、被疑者の任意の協力が得られず、パスワード等を解除することができなければ、現状では、サイバー犯罪条約32条「コンピュータシステムを通じて当該データを自国に開示する正当な権限を有する者の合法かつ任意の同意が得られる場合」しか、海外に蔵置されるクラウド等のサーバーにアクセスできない。したがって、被疑者の任意の同意がなければ、国際司法共助等によるしかなく、大きな課題である。暗号解除やサイバー操作の立法的手当が必要であろう。
|