2017 Fiscal Year Research-status Report
精神障害に起因する犯罪の被害者支援と加害者の再犯防止
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17K03441
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
奥村 正雄 同志社大学, 司法研究科, 教授 (30265532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 あゆみ 中京大学, 法務研究科, 教授 (40535390)
川本 哲郎 同志社大学, 法学部, 教授 (60224862)
洲見 光男 同志社大学, 司法研究科, 教授 (90241124)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 少年法 / 精神障害 / 責任無能力 / 知的障害 / 摂食障害 / 犯罪被害者 / 被害者支援 / 自白の証拠能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の比較法研究に欠かせないと判断したイギリス刑法の教科書(Andrew Ashworth and Jeremy Horder, Principles of Criminal Law 7thed., Oxford University Press 2013)を協力者を得て翻訳作業を行い、同志社法学に7号に分けて14本の原稿が掲載中である。この作業を通して、本研究課題のイギリスにおける背景事情と刑事法との関係等の理解が、本研究を実行している者だけではなく、読者にも一層深まるであろう。 各人の研究成果として、奥村正雄「少年法の適用年齢の引下げを巡る議論ー犯罪被害者等への配慮の視点を中心にー」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.833-867は、本研究課題との直接的関連はないが、保護処分の妥当性の問題、是非善悪の弁別能力の有無・程度の問題の検討は、未成年の精神障害ないし知的障害を有する加害者の非行と社会復帰支援、それらの傷害を有する少年加害者の被害者支援のあり方を考えるうえで、重要である。 川本哲郎「犯罪被害者の人権と被害者支援」同志社法学396Ⅱ号(2018年) pp.813-832は、犯罪被害者支援のあり方について、2004年の犯罪被害者等基本法及び2005年の犯罪被害者等基本計画によって、精神障害や知的障害に起因する犯罪の被害者に対する支援も同等の支援を受けるべき権利があることを主張する。洲見光男「アメリカにおける取調べの規制―自白の証拠能力の制限―」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.870-889は、知的障害を有する被疑者の取調べにおける捜査官の誘導等による自白の証拠能力の問題点を検討する。緒方あゆみ「摂食障害と万引きに関する一考察」同志社法学396Ⅱ号(2018年)pp.1148-1187は、万引き事犯における摂食障害との関係性を分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画では、イギリスの法務省、裁判所、被害者支援団体等の海外における関係機関に対する訪問調査を実施する予定であった。しかし、その前に、文献等による出来る限りの事前調査に基づく問題把握が必要であると考え、イギリス刑法の代表的な教科書であるあAndrew Ashworth & Jeremy Horder, Principles of Crimininal Law, 7ed., 2013.の全訳を翻訳作業を協力者の協力を得て継続中である(同志社法学に連載中)。国内外の関係機関への訪問調査は、今年度ぜひ実施したい。 共同研究者の関連研究は、予定通り進展している。奥村は、少年法の適用年齢の引下げの是非について、応報刑を基軸とする行為責任をとりうるか、保護処分が妥当かの問題、是非善悪の弁別能力の有無・程度の問題を検討している。これは、本研究課題を直接取り上げるものではないが、未成年の精神障害ないし知的障害を有する加害者の非行と社会復帰支援、それらの傷害を有する少年が被害者となった場合の支援のあり方を考えるうえで
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を推進するために、今年度は、以下の3点を目標としたい。 第1に。国内外の関係機関の訪問調査を実施したい。特に、知的障害者の支援施設の訪問調査は、国内とイギリス(出来ればドイツも)の関係機関の訪問調査を行いたい、 第2に、上記著作物の翻訳作業を完成させたい。 第3に、精神障害・知的障害を有する犯罪者の再犯防止に向けた処遇のあり方、その被害者の立ち直りに対する経済的・精神的・実際的支援及び刑事手続上の権利利益の擁護の在り方を検討したい。
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Causes of Carryover |
平成29年度においてイギリスの刑法教科書の翻訳事業につき著作権の一環として、出版社に翻訳権料を科研費で支払ったため。国内外の関係機関の訪問調査が今年度と次年度に跨って実施することになっため。
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Research Products
(4 results)