2017 Fiscal Year Research-status Report
会社法上の債権者保護規定を通じた従業員の保護に関する研究
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17K03468
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高木 康衣 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (60435120)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 会社法350条 / 債権者保護 / 従業員保護 / 会社責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の実施計画では、4~7月に会社法350条に関する事例・分析収集と判例評釈の執筆を、8~1月にかけては、引き続き会社法350条に関する事例の分析検討を行いつつ、その結果を研究会等で報告し、2~3月には論文公表を行うとしていた。 実施時期につき、資料収集は年間を通じて行ったため計画とは齟齬が生じたが、7月には西南学院大学(福岡市)で行われた九州産業法研究会において会社法350条の適用が問題となった東京地判平成29年1月19日(金判1512号42頁)に関する報告を行い、報告後さらに中央大学・丸山秀平教授との間で同報告に関する意見交換を行った上で、その成果を熊本法学141号(2017年12月)257-266頁に公表した。 また、平成29年8・9・11・12・2・3月に実施された大阪大学水島郁子教授代表の基盤研究「労働法と会社法の連携調和-中小企業法実務との乖離」による研究会(中小科研・大阪大学中之島センター)に参加し、労働法と会社法との交錯について実務家・専門家との意見交換の機会を得、平成30年2月6日の同研究会においては本研究の成果の一端を報告した。報告成果は、同研究会が平成30年度に公刊予定の書籍「中小企業の法務と理論」の第7章に拙稿「中小企業におけるパワハラ・セクハラと会社法350条の適用」として公表予定である(脱稿済み)。 その他、熊本大学紺屋博昭教授主催「雇用法研究会」において、2018年3月9日に「不法行為責任の追及事案における退職強要とパワハラの違い」として東京高判平成29年10月18日を題材とする会社法350条の利用状況に関する報告を行った。また、これに先立ち雇用構築学研究所のNEWS LETTER52号(2018年1月)2-6頁に「代表取締役の安全配慮義務違反と会社法429条の責任」を寄稿した。これは本来平成31年度実施予定の一部を前倒しで行ったものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は会社法350条における事例分析のうち、中小企業に関する事例分析に時間を多く割いたこと、また中小企業に関連する事案がパワハラ・セクハラ問題に偏ったこともあり、予想以上にパワハラ・セクハラに関する研究に時間を割く必要があったことなどから、中小企業を対象としない事例及びパワハラ・セクハラ問題ではないその他の不法行為事例についての分析・検討を十分に行うことができなかった。また、会社法350条と民法709条・715条との関連で、研究代表者の想定以上に民法に関する知識不足があり、この点も、事例の分析・検討に時間を費やす結果となってしまった。これらの点からすると、本研究には当初の予定に比べてかなりの遅れが生じているようにも思われる。 もっとも、次年度以降の作業予定としていた会社法429条に関する事案については、すでに平成29年度でその検討・分析を開始しており、一部ではあるが成果の一部の公表にまで至っている。この点を考慮すると、全体としては、そこまでの遅れとまでは言えないようにも思われる。 ただし、本来の平成29年度の研究計画のうち、会社法350条事例に関する分析と検討について、公開大会社における事案を中心に、未だ分析・検討が不十分であって成果の公表にまで至っていないものについては、引き続き次年度以降も実施することにならざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画では、平成30年度には、会社法22条に関する事例分析・検討を行うものとしていた。しかしながら、上記「現在までの進捗状況」に記載の通り、研究計画にやや遅れが出てることに加え、当初予定していた成果の公表媒体としての熊本ロージャーナルが平成30年3月をもって閉刊されたこと等もあり、平成30年度の研究実施計画は、次のように見直す必要がある。
4~9月 会社法350条に関する事例・関連する文献の収集と、関連する判例評釈等の執筆 10~3月 会社法22条を中心とする会社法350条以外の債権者保護規定に関する資料収集、事例の分析・検討、専門家等との意見交換と研究会(中央大学民事法研究会、雇用法研究会、大阪大学中小科研研究会)等における報告、会社法22条に関する判例評釈等の執筆・公表 、今年度 研究計画の自己評価と次年度の研究計画の確認・調整
会社法22条に関する事例分析・検討とその成果の公表は当初の予定より遅れざるを得ない。本研究においてもっとも重要なのは、会社法350条に対する分析と検討であり、これが不十分なものとなることを避ける必要がある。そのため、平成30年度の前半は当初予定していた会社法22条に関する資料収集等の作業ではなく、引き続き会社法350条に関する分析と検討及び成果の公表に努めることとする。その上で、10月以降においては、当初予定していた会社法22条に関する検討・成果の公表ではなく、「会社法22条を含めた会社法350条以外の債権者保護規定」に関する情報収集等の作業に変更し、平成31年度に実施予定であった作業の一部を前倒した上で、会社法22条だけを特別に取り上げるのではなく、会社法350条以外の規定を一括りとして検討する方向に修正する。その結果、会社法22条への分析・検討が浅くなる危険は否めないが、本研究の目的達成のためにはやむを得ない対応と考える。
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Research Products
(3 results)