2018 Fiscal Year Research-status Report
会社法上の債権者保護規定を通じた従業員の保護に関する研究
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17K03468
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高木 康衣 熊本大学, 熊本創生推進機構, 准教授 (60435120)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 会社法350条 / 会社法22条 / 商法18条 / 債権者保護 / 企業の不法行為責任 / 詐害的事業譲渡 / 詐害的会社分割 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30 年度の活動の成果は、論文2本(平成30年11月 論文「中小企業におけるパワハラ・セクハラと会社法350条の適用」水島郁子・山下眞弘編『中小企業の法務と理論―労働法と会社法の連携』(中央経済社)316-339頁)、平成31年3月 論文「日本における会社分割と債権者保護-濫用的会社分割事案に対する判例紹介を中心に-」韓国圓光大学・圓光法学35巻1号 377-397頁)と、判例評釈1本「株主総会における議事進行にかかわる総会決議取消しの訴えならびに株主総会における株主権の侵害に対する損害賠償請求のいずれも否定された第1審判決が控訴審においても支持された事例──フジ・メディアホールディングス株主総会決議取消請求事件控訴審判決──」(金判1549号10-15頁、2018年9月15日号)である。判例評釈分については、不法行為責任において会社法350条責任が追及された事案であったのではあるが、評釈内部ではその点については字数の都合上詳細を取り上げてはいない。 また、海外におけるシンポジウム報告(平成30年12月2日 上海大学法学院シンポジウム「”一帯一路”背景下での多国籍企業買収における法的リスクとその予防」での「ドイツ・日本におけるM&Aの債権者保護」)を行った。国内においては、研究報告として、平成30年4月26日早稲田大学商法研究会において、「東京高判2017(平29)年07月12日金判1524号8頁(フジ・メディアHD事件)」についての判例研究報告、平成31年1月26日の大阪大学第39回中小科研において、「ハラスメントと職場環境配慮義務(井寄奈美特定社会保険労務士執筆)」に関する書評報告を、それぞれ行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の活動については、平成29年度内で完成しなかった会社法350条に関する論考執筆・判例研究報告などの作業が31年度前半に繰り越されたこと、30年度後半に上海大学でのシンポジウムの参加が決定したこと、により大幅に修正を行った。修正後の活動内容は以下の通りである。 4~6月 会社法350条に関する論考の執筆、判例研究報告 7~12月 組織再編における債権者保護規定に関する事案・文献の収集・分析・検討、専門家等との意見交換、研究会等での報告、会社法350条に関する判例研究(執筆) 1~3月 組織再編における債権者保護規定に関する論文公表、30年度研究計画の自己評価と次年度の研究計画の確認・調整 この結果、平成29年度内で公表すべきであった会社法350条に関する論文の執筆は、平成30年度に遅れることになったが、本来であれば平成31年度(令和元年度)に実施する内容についても先取りで研究・発表・論文公表を行った関係で、組織再編行為における債権者保護規定に関する文献収集・検討・論文執筆などを実施することができた。その意味では、当初の計画以上に進展しているとも言えるが、会社法22条についての掘り下げた検討は十分にできていないため、総合的に見れば、概ね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の平成31年度の研究計画予定は、 4~6月 その他債権者保護規定に関する事案・文献の収集 7~1月 調査結果の分析、専門家等との意見交換、研究会での発表、論文執筆 2~3月 その他の債権者保護規定に関する論文または判例評釈公表、今年度研究計画の自己評価と最終年度の研究計画の確認・調整 であったが、上述の通り、すでに平成30年度において債権者保護規定に関する資料収集・分析・論文公表の一部を実施している。そのため、平成31年度においては、平成30年度において実施すべきであった会社法22条(商法18条)をに関する情報収集・分析・論文(判例研究)公表と、引き続き本研究においてもっとも主要な分析対象である会社法350条についての情報収集・分析・論文執筆を行い、最終年度における論文公表に向けた準備を進めていくことにしたい。 また、本研究を進めていく上で、「民法および一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」78条などについても取り上げる必要があり、それに関連して同法をはじめ民法の関連分野(法人論およびふ不法行為論)についての理解を深める必要性が非常に高くなっている。平成30年度にも民法に関する資料収集は実施しているが、引き続き、それらについての資料収集もあわせて行っていくことにしたい。
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Causes of Carryover |
会社法350条(民法44条)に関する資料収集において、研究代表者が購入した書籍の金額と予算残額の認識を誤っていたため、期末に公刊された横塚泰助『改正商法義鮮完 別巻1212』80,352円、および日本法律学校内法政学会『改正商法釈義完別巻1214』70,308円を、科研費で購入するつもりでいたところ、残額不足のため学内研究費での処理とすることになった。そのため、平成30年度は科研費での交付決定金のうち31,174円を未消化のまま残すことになった。
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