2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03496
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
福本 葵 帝塚山大学, 法学部, 教授 (40388880)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 株主総会プロセス / 招集通知の電子化 / 証券決済期間 / T+2 / カウンターパーティリスク / 株主総会開催日 / 基準日 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年4月10日、日本証券経済研究所における証券経済研究会および平成29年5月29日、株式市場研究会において、「株主総会プロセスの改革」と題する研究発表を行った。また、研究会での議論を経て、研究所発行の『証券レビュー』第57巻第9号(2017年4月)において、「株主総会プロセスの改革」と題する査読論文を発表した。2018年2月17日、法制審議会が会社法改正の試案をまとめた。この会社法改正の課題の一つに、株主総会の手続きの合理化がある。本稿では、この中でも特に、総会開催日の適切な設定、招集通知・総会資料の電子化について考察した。上場企業の持続的な成長と中期的な企業価値の向上のためには、企業と株主との建設的な対話が不可欠であるが、現在は株主総会日が集中している上に、招集通知の受領後の議決権行使期間が短く、議案を十分に検討できないという批判があった。これを受け、この度の改正は株主総会のプロセスの電子化を促進するものである。 次に、平成29年9月30日、日本証券経済研究所における証券経済研究会において、「日米の決済期間T+2への短縮」と題する研究発表を行った。そして、ここでの議論を経て、同研究所発行の『証券経済研究』第101号(2018年3月)において、「日米の証券決済期間T+2への短縮」と題する査読論文を発表した。2017年9月5日からアメリカの証券決済期間がT+2に短縮された。欧州の証券市場ではすでにT+2となっている。日本の株式市場の決済期間が現行のままでは国際競争力が相対的に低下する要因となる。そのため,日本の証券決済期間のT+2への短縮化についても議論され、2019年の4月または5月の連休明けに実施予定である。決済期間の短縮化は,カウンターパーティリスクなどの削減に繋がる。本稿では日米決済期間短縮のこれまでの議論を整理し、考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題である「長期保有株主に対する優遇策」については、この一年あまり議論の進展がなかったため、広く企業と株主との対話について対話の場である株主総会についての研究を進めた。また、さらに広く日本の証券市場の改革である、「日米証券決済期間のT+2への短縮」についての研究を行った。前者のテーマに関しては、長期保有株主にとっては、エグジット(売却)によって利益を確定する短期保有の株主よりも発行企業との対話(ボイス)が重要であると考えられるため、意義あるものと考える。後者も日本の証券市場にとっては議論が必要なテーマであり、先行研究が少ないため意義のあるものと考える。 今後は本研究課題である「長期保有株主に対する優遇策」により近いテーマを研究する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
公益財団法人日本証券経済研究所における証券経済研究会および株式市場研究会のメンバーまたはオブザーバーとなっており、研究会に出席し、経済学的、法律学的な株式市場に関する様々なテーマについての議論に参加している。また、それぞれの研究会で定期的に発表し、ここでの議論を経て、「証研レポート」、「証券レビュー」、「証券経済研究」に査読論文を発表する。これらの論文は同研究所のホームページでPDFの形で全文が公表されているため、誰でも閲覧可能である。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、8月に予定していたアメリカ出張が論文執筆のためできなかったことが原因である。平成30年度に行いたいと考える。平成30年度はこの他関連書籍、必要なソフトおよび国内調査を行う予定である。
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