2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K03518
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
佐藤 勤 南山大学, 法学部, 教授 (50513587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 修 富山大学, 経済学部, 教授 (00512691)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 福祉型信託 / アメリカ医療保険制度 / 差押禁止債権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、以下のとおり、民事領域における信託の利用実態および信託の潜在ニーズを調査し、当初設定した【課題1】を解明するための検討を行った。 第1に、信託利用の先進国であるアメリカ、イギリスなど、英米法の国々における民事信託の利用状況の調査を行った。さらに、近時アジアの英米法諸国において類似した制度が導入され、我が国においても関心がもたれているアメリカの特別支援信託について、その仕組み、発祥・発展の経緯、その類型および規制概要、ならびにそれに関するアメリカの社会保障制度とその沿革について、詳細な調査を行った。この研究成果については、論文「アメリカの福祉型信託の発展と我が国への示唆」にまとめ、2017年11月、「信託」272号で公表した。 第2に、第1の成果を踏まえ、アメリカの特別支援信託の仕組みについて、詳細な分析を行い、特別支援信託またはそれに類似した信託を我が国に導入する場合の法制上の問題点について、詳細な検討を行った。この研究成果については、論文「福祉型信託の利用拡大にあたっての日本法の課題」にまとめ、2018年2月「市民と法」109号で公表した。 第3に、第1および第2の検討過程で、受益権が差押えを受けず、かつ破産時に破産財団に帰属せずに、長期にわたり高齢者などの経済的弱者に生活維持のための資金が供給され続ける制度の存在を知った。そこで、我が国の民事執行法や破産法などでの受益権の取り扱いについて、詳細に分析、検討を行った。これについては、論文「信託受益権に対する差押え」にまとめ、「富大経済論集」63巻3号で公表した。 以上三つの研究成果の重要な論点については、さらに研究を継続し、2018年6月に開催される信託法学会で報告を行い、論文として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定期的に開催される研究会に参画し、実務家や研究者と意見交換を行う等によって、実務動向を把握し、かつ問題点や課題を認識できたことから、論点の絞込みを予定より早く行うことができ、効率的な研究を行うことができた。また、その副次的な効果として、研究成果も実務家の購読する雑誌に公表することができたことから、研究成果をより広く周知することができ、今後の研究にも資するものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、2017年度の成果について、さらなる掘り下げ、深度を深めることに注力する。 具体的には、4月に研究会での2017年度の研究成果の報告を行い、意見交換を行う。この意見交換を踏まえ、2017年度の研究成果の深度を深めて、その内容を6月に開催される信託法学会で報告する予定にしている。 7月以降は、アメリカやイギリスにおける民事領域での信託の利用の実態の調査やその理論的背景の研究に着手し、実地調査の計画を立案する。
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Causes of Carryover |
研究の対象となる法律である民法改正が遅延し、関連する文献の発行が遅れたことから、購入対象と考えていた文献の購入が年度内にできなかったことから、予算を次年度に繰り越した。したがって、繰り越し分については、購入を予定していた文献の購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)