2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K03557
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
菅原 光 専修大学, 法学部, 教授 (90405481)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本政治思想史 / 明治政治思想史 / 日本思想史 / 明六社 / 西周 / グリフィス / 津田真道 / 福澤諭吉 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本最初の学術団体である明六社を中心に据えて明治政治思想を捉え直すべく、グリフィスや柏原孝章ら、「通信員」と呼ばれる遠隔地で活動した明六社メンバーの活動実態とその意義についての調査、考察を継続して行っている。『明六雑誌』並びに演説会のみに焦点を定めたのでは、明六社が果たした明治政治思想史上の意義を捉え直すことが出来ないと考えるからであり、雑誌廃刊以後の明六社についても視野を向ける必要があるからである。 2018年度に重点的に取り組んだのは、明六社に関わった個々の思想家についての最新の研究成果を踏まえつつ、史料の読解に基づいた新たな解釈の可能性を探るという作業である。新史料の発掘に向けた調査をすべく、福井、津和野などへの出張も行ったが、それ以上に重視したのは、既存の史料の精読である。規定の解釈の方向性を抜きにして、一文、一文字に至るまで、全てを現代語訳に直すつもりで読解を試みた。活字になった研究成果というものは、重要度が低いと判断した箇所、難解な箇所については敢えて等閑視し、一定の結論を導き出す。しかし、そうやって等閑視されてきた部分にこそ、重要な新知見の可能性が眠っているかもしれないと考えたからである。 そのような精読を試みた史料については、依然として読解不能な箇所、今後も解明できそうにない箇所の方が多い。解釈し得た部分に関しても、案の定、何の重要性も読み込めないことの方が多いが、いくつかの部分では、従来の思想家イメージを覆すことはないにしても、イメージを拡大もしくは縮小させ得る可能性のある部分も発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教務関係の責任者に就任した関係で忙しくなり、計画していた出張を十分にこなすことができなかった。そのため、次年度への研究費の繰り越しも発生したが、今年度は、事前に年間スケジュールが把握できるようになっているなど、状況に慣れてきたこともあるため、スケジュールを調整して、昨年度予定していた分も含め、必要な出張を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行ってきた調査の成果を踏まえ、さらに必要があると思われる調査出張を行いながら、引き続き、史料の読解と分析を行う。そのことによって、明六社の成立過程に加え、雑誌未掲載の演説会での演説内容、雑誌廃刊以後の明六社の活動実態を解明していきたい。 史料を精読していくなかで、明六社に関わった思想家達の思想的背景としての漢文脈についての知識が重要であることを以前にも増して痛感している。さしたる意味がない部分のように思えても、漢文脈を踏まえて理解すると、重要なメッセージが隠れていたりすることがあるからである。一文、一文字をも疎かにせずに史料を精読していくためには、漢文脈に関わる知的伝統についての調査と考察がさらに重要である。近世思想史研究の専門家から受けられるフィードバックを重視しながら、この点の研究を深めていきたい。 前年度に行い得なかった調査や発表のための出張を確実に行い、その成果を研究に取り入れるべく、事前に綿密なスケジュール調整をしてのぞむ。
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Causes of Carryover |
教務関係の責任者になって忙しくなったことにより、計画していた出張を行うことができなかったため、残額が生じた。 昨年度は教務関係の責任者になった初年度だったため、スケジュールの調整がきなかった部分があるが、今年度は事前にスケジュールを調整し、前年度予定していた分も含め、確実に必要な出張を行う。
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Research Products
(1 results)