2017 Fiscal Year Research-status Report
日本と欧米諸国における解職請求に関する制度と実際についての比較研究
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17K03559
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡本 三彦 東海大学, 政治経済学部, 教授 (50341011)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 解職請求 / 直接民主制 / 地方議会 / 首長 / 比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(平成29年度)は研究計画3ヵ年の1年目にあたることから、(1)解職請求(リコール)制度に関する先行研究の整理と(2)現地調査およびデータの収集を実施した。 まず、(1)先行研究の整理では、日本における解職請求制度の歴史と実際を中心に文献にあたるとともに、同様の制度を有する欧米諸国(アメリカ、カナダ、ドイツ、スイス、ポーランド)における制度の沿革と実際について探り、理解を深めた。とくに、カナダやポーランドでは、解職請求制度の歴史は比較的浅い一方で、古くから制度化してきたスイスでは解職請求制度を廃止した州や地方自治体があり、あるいはほとんど利用されていない、という実態も明らかになった。次に、(2)現地調査およびデータの収集では、平成29年度に入り、まず日本の解職請求(リコール)制度、すなわち議会の解散、議員の解職、首長の解職のリコール投票にかかるデータを収集するために、1945年以降の「地方自治月報」を閲覧、複写し、リコール投票が実施された年月日、投票率、投票結果、請求理由などのデータを収集した。また、諸外国におけるリコール制度については、平成29年9月上旬および平成30年3月上旬にスイスのチューリヒ市等を訪問して、議会・行政関係者および研究者にインタビューを実施するとともに、多くの文献、資料を入手した。さらに、本研究に関係するヨーロッパ諸国での現地調査に際して、スイス・チューリヒ大学のデモクラシー研究所直接民主制研究センターからも多くの協力を得られた。なお、次年度以降の調査等についても、同研究所からサポートが得られることになった。 帰国後は、国内外で収集した資料と現地調査で得られた関係者へのインタビューなどについて整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況は、おおむね順調であるといえよう。その理由は以下のとおりである。 平成29年度は本研究の1年目にあたるため、今後の研究の基礎として、解職請求制度に関する先行研究の整理と現地調査の実施を予定していた。まず、日本の地方自治体については、文献をはじめ資料を収集した。また、文献・資料にあたり先行研究を踏まえながら、日本と欧米諸国における解職請求制度について理解を深めることができた。 続いて、現地調査では、平成29年9月上旬および平成30年3月上旬に本研究の対象であるスイスを訪問して、自治体関係者にインタビューを実施するとともに、チューリヒ大学デモクラシー研究所直接民主制センターにおいて情報提供の協力を得られた。とくに平成30年3月の訪問では、今後の解職請求制度についての研究の進め方について議論し、有益な示唆が得られた。なお、当初の予定では、平成29年度は、スイス、ドイツ、ポーランドの欧州3ヵ国の1~2都市を対象に訪問する予定であったが、実際には、スイスにおいて現地調査を実施することとし、その結果、都市自治体の行政職員、議会関係者にインタビューができた。さらに訪問した都市からは、議会関係者、行政関係者から、次年度以降の研究に関して協力が得られることになった。なお、北米については、カナダのブリティシュコンロンビア州の関係機関と連絡をとり、来年度以降に現地調査を実施することになった。 その後は、日本で収集した解職請求の実際に関するデータおよび資料等を整理するとともに、対象となる欧米諸国の解職請求制度の特徴を探っている。また、平成30年度に実施する予定である北米の諸都市における調査事項等についての検討と準備に充てている。 以上のことから、先行研究の整理、現地調査の実施ともに、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2年目にあたる平成30年度の研究計画で中心となるのは、収集したデータの統計分析と初年度で訪問していない国を含むところでの現地調査である。 まず、平成29年度の調査で得られた日本におけるリコール投票についてのデータベースを構築するとともに、統計分析(計量分析)を行い、リコール投票の類型化を試みる。例えば、政策をめぐる住民と議会、首長との対立、党派間の対立、首長と議会との対立、汚職などといった解職請求の理由によってリコール投票を分類することで類型化が可能であるか、を検討する。 その一方で、各類型に典型的な事例を取り上げて、事例研究も行う。その場合に、事例で取り上げた地方自治体の関係者に、リコール投票についてインタビューを行う。こうした作業を通じて、日本においてリコール投票が政治的・政策的帰結に与える影響について考察する。こうして得られた見解やデータをもとに濃密で詳しい記述を試みる予定である。 また、諸外国のリコール投票についても、前年度に収集したデータを整理し、類型化を試みる。同時に、諸外国についても典型的な事例を取り上げ、事例研究を行う。そこでは、リコール制度導入の経過など歴史的側面からも議論する。 平成30年度は8月から9月にかけて、本研究で対象としている欧米諸国のなかでも北米のアメリカやカナダを中心に現地調査を行い、実際にリコール投票に関係した機関等にインタビューをする予定である。 また、平成30年度には、研究会等において日本のリコールを中心に本研究の中間報告を行うとともに、国内外の研究者を交えて国際比較についても議論する。それによって多くの研究者から意見を得られるとともに、さらに具体的な事例に関する詳しい記述について議論する予定である。
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Causes of Carryover |
25,003円が次年度に繰り越された理由は、平成29年度の交付金のうち、主として人件費・謝金の支出がなかったことによる。これについては、次年度に繰り越したうえで、使用する予定である。
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