2019 Fiscal Year Research-status Report
リアル市民社会とデモクラシーの関係性に関するドイツと日本の比較事例研究
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17K03564
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坪郷 實 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 名誉教授 (20118061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リアル市民社会 / デモクラシー / ヘイトスピーチ・ヘイトクライム規制 / 再生可能エネルギー / 自治体電力 / 市民電力 / 市民政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)リアル市民社会についてのドイツの事例に関して、市民社会組織の実態調査を分析するとともに、特に移民統合政策における自治体政府の取り組み、市民社会組織の取り組みについて分析を行なった。 (2)日本におけるリアル市民社会と自治体政府との関係性に関しては、「ヘイトスピーチをめぐる対抗状況の事例(川崎市)」を取り上げ、川崎市桜本における外国籍市民の現状、市民、市民社会組織の動向(社会福祉法人青丘社など)、行政による対応と「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(ヘイトスピーチを禁止し、繰り返しヘイトスピーチを行い、命令に違反した者は『50万円以下の罰金に処する』規定を含む)制定の動きについてヒアリング(7月に、川崎ふれあい館館長崔江以子氏、川崎地方自治研究センター板橋洋一氏)を行った。川崎市行政のこれまでの多文化共生の取り組みと、青丘社の広範囲な活動など市民社会の主体形成が行われてきた歴史と現状、重要な論点を把握することができた。2019年12月に、同条例は成立した。 (3)「脱原発依存とエネルギー政策の転換の事例」に関しては、市民電力や自治体電力の現状、自治体の再生可能エネルギー推進条例について、市民電力連絡会の山崎求博氏、総合地球環境学研究所の増原直樹氏にヒアリングを行った。特に、固定価格買取制度の課題、自治体電力の全国的な広がりと地域間連携の重要性を把握することができた。 (4)日本における自治体改革と市民活動促進政策に関しては、自治体間連携、自治体と市民電力の連携に焦点を当てて、分析を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)市民社会とデモクラシーの関係性について、その10の指針を整理した「市民社会とデモクラシー・再論」(『福祉社会へのアプローチ 下巻』所収)を執筆した。 (2)日本におけるリアル市民社会と自治体政府の関係性に関する事例研究について、市民自治・市民政治の実践における地域政党である東京・生活者ネットワークの役割について論じた「市民自治・市民政治の実践と新たな展開へ」(『現代の理論』2019春号)を執筆した。また、市民電力と自治体電力の広がり、自治体による再生可能エネルギーの促進政策と地域間連携の重要性を論じた「再生可能エネルギーをひろげる――エネルギー自治の視点」(『都市問題』2019年7月号)を執筆した。 このように、市民社会とデモクラシーの関係性に関する日本の事例の分析を進めている。 (3)他方で、秋以降は、家族の介護などの関係で、十分に時間が確保できなかったため、報告書作成に向けた研究協力者による研究会の開催を行えなかった。また、条例が成立した「ヘイトスピーチをめぐる対抗状況の事例(川崎市)」、「脱原発依存とエネルギー政策の転換の事例」などに関する必要な追加のヒアリングを行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)今後は、2019年12月に成立した「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(「ヘイトスピーチをめぐる対抗状況の事例(川崎市)」)、及び「脱原発依存とエネルギー政策の転換の事例」(固定価格買取制度の改訂と課題)に関する必要な追加のヒアリングを行う。 (2)研究協力者による各事例の分担執筆はほぼ終えているので、報告書完成に向けて、研究協力者(小林幸治氏、伊藤久雄氏、林和孝氏、宮崎徹氏、三浦一浩氏)の参加による市民社会研究会を開催し、報告書の最終版を作成する。 (3)リアル市民社会とデモクラシーの関係性に関するドイツと日本の比較事例研究に関する報告書を印刷する。
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Causes of Carryover |
秋以降、家族の介護のため、調査のための十分な時間が取れず、必要な追加ヒアリングの実施、及び研究協力者による市民社会研究会の開催と全体報告書の作成が遅れたため。 今後、①報告書作成のための追加図書・資料の購入費、②追加のヒアリングのための謝金、③研究協力者による市民社会研究会への参加と事例研究に関する分担報告書の謝金、④報告書の印刷費に使用する。
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