2018 Fiscal Year Research-status Report
地方自治体における多文化共生政策の選択:政治要因に着目して
Project/Area Number |
17K03566
|
Research Institution | Hokuriku Gakuin University |
Principal Investigator |
若山 将実 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 准教授(移行) (00632332)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
俵 希實 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 教授(移行) (60506921)
西村 洋一 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 教授(移行) (70406809)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 外国人住民に対する日本人住民の意識調査 / 地方自治体の多文化共生政策 / 排外意識 / 対面のネットワーク / メディアのネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年のグローバル化の状況を踏まえ、日本の地方自治体における多文化共生政策に対する政治的意思決定プロセスに焦点を当て、影響する要因を明らかにすることを目的としている。本研究では特に地方自治体の首長および地方議会議員の特性・行動という政治的要因が多文化共生政策に与える影響に焦点を当てる。さらには、そもそも彼ら政治家を選出する有権者の態度がどのように形成され、そして地方選挙において彼らがどのような投票を行うのかという一連の政治過程を把握することを目指している。 平成30年度においては、対面、メディアのネットワークへの有権者の接触と地方自治体における多文化共生政策や外国人への意識・態度に与える影響を検討することを目的として、いくつかの自治体を外国人住民比率と地方自治体における多文化共生政策の充実度という基準からサンプルを割り当てる形でWeb調査を実施することを計画していた。なお、地方自治体における多文化共生政策の充実度は、平成29年度に実施した地方自治体調査から測ることとした。 このWeb調査は、静岡県と愛知県の8自治体(静岡県:磐田市・富士市・袋井市・藤枝市、愛知県:豊橋市・大府市・碧南市・江南市)に居住する日本人住民を対象に2018年11月30日から12月11日までの期間に予定通り実施することができた。調査項目として、地域社会、外国(語)との関わり、他者とのつきあい、職場、政策、排外意識、パーソナルネットワーク、メディアへの接触、一般的信頼、ナショナリズム、そして政治意識に関する質問を設定した。回収数は1289人であり、計画時に目標としていた設計標本サイズを上回ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに静岡県と愛知県の8自治体に居住する日本人住民を対象としたWeb調査を実施することができたことから、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。 このWeb調査を実施するにあたっては、外国人住民比率と地方自治体における多文化共生政策の充実度という基準(①多文化共生政策が充実している・外国人住民比率が高い自治体,②多文化共生政策が充実している・外国人比率が低い自治体,③多文化共生政策が乏しい・外国人住民比率が高い自治体,そして④多文化共生政策が乏しい・外国人住民比率が低い自治体)から対象とする自治体を選定したが、それらの自治体においては調査の実施を依頼した調査会社のモニター数が少なかったために、十分にモニタ数が確保できるかどうかという基準も自治体を選定するにあたって考慮せざるを得なかったことは記しておきたい。今後、この調査データの分析を行うことで研究を進め、学会での報告や学術誌への論文掲載を行っていきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の研究実施計画は、模擬的な地方自治体首長選挙における有権者の投票行動への外国人への意識・態度の影響の検討を行うことを目的として、前年度までの地方自治体の多文化共生政策と首長・議会構成との関連、外国人への意識・態度の形成過程の把握を行ったところで、意思決定の一つの結果としての選挙にそれらがどのように影響するのかを実験的調査により検討を行うこととなっていたが、基本的に実施計画通りに研究を遂行していきたい。ただし、外国人の新たな在留資格を設ける入管法の改正案が国会に提出されたことを契機とする昨年秋以来の外国人労働者のさらなる受け入れをめぐる議論が沸騰したことから、以前に比べ地方自治体の首長や議員、そして有権者の外国人住民との共生に対する関心も高まり、それが本年4月に実施された統一地方選挙や、今後7月に実施が予定されている参議院議員通常選挙に影響している可能性もあることから、今年度予定する実験的調査においては、計画通り模擬的な選挙を設定したうえで行うのか、または現実の選挙における有権者の投票行動を対象として行うのかを慎重に再検討したうえで実施してゆくこととしたい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、平成30年度にWeb調査を実施するにあたって、研究実施計画の段階においては大都市圏の政令指定都市(大阪市・名古屋市・横浜市)を3000名をサンプルとして対象とする予定であったものが、対象をニューカマーと呼ばれる外国人住民が多く居住する愛知県と静岡県の8都市の住民を対象とし、サンプルサイズも目標を1280名と計画段階よりも減らしたために、研究経費の使途が一部変更したことが大きい。また、研究実施計画の段階において予定していたインタビュー調査も諸事情から実施できなかったことも次年度使用額が生じた原因の一端としてある。 次年度使用額として生じた助成金については、より学術的に意味のある分析を行うために次年度実施する予定の実験的調査の費用に充てたい。
|