2018 Fiscal Year Research-status Report
アクターの選好形成に係る中範囲理論を用いた地方政治の多様性に関する研究
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17K03571
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
徳久 恭子 立命館大学, 法学部, 教授 (60440997)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 政治学 / 政策アイディア / 教育政策 / 地方創生 / 政府間関係 / 県費負担教員制度 / 公立高校移管問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方創生の核として期待される高等学校の役割を明らかにするために、奥尻町へのヒアリング調査を昨年度に引き続き実施した。具体的には,高校の町立移管に関する諸アクターの対応(道庁,町役場,町教育委員会,奥尻高校)や制度的制約等を確認する作業を行った。ここで得た知見をもとに,12月に研究論文を公表している。 2019年3月には,北海道庁内の教育委員会を訪れ,人口減少社会における学校運営の課題についてヒアリング調査を行った。「現象」としての人口減少と「政策課題」としての人口減少が顕在化するタイミングが同じでないことは,公文書から直感的に理解できるものの,正確な理解とは言い難い。ヒアリング調査では,政策アイディアがどのタイミングでどのようにインプットされたか,それらは政策転換を促したかどうかについて質問を行い,実態を明らかにすることができた。 人口減少社会への対応という政策課題は,国・都道府県・市町村それぞれの政府単位で認識されているものの,上位政府の政策誘導や地方自治体の独自施策およびそれに起因する政策波及のあり方等は一様でない。関連する各種政策を時系列で把握し政策間の関係性を明らかにすることに併せて,当事者の認識をヒアリング調査を通じて確認すること,そして,一致と差異を明らかにすることは,いずれの因子がアクターの政策選好に影響を与えたかを類推させてくれる。2018年度の研究は,この点を明らかにする作業を行った。 くわえて,2018年度は,教育政策特有の機能を洗い出すために,県費負担教職員制度に代表される教育行政特有の「行政単位」の機能を特定し,それがもたらす効果と2000年代の改革(教育行政の分権化や規制緩和)が与えた影響について検討を行った。具体的には,5件のインタビュー調査と文献研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は入院を伴う健康上の問題があり,調査計画の変更を余儀なくされた。2018年度は変更した計画を前提に,連携研究者と意思疎通を図りながら,複数のヒアリング調査や文献研究を行った。 2018年度の調査は,2017年度に示した今後の研究計画に沿ったものと,教育行政単位のリスケーリングという新たな関心に即したものとを並行させた。前者は実績概要に示したとおりであり,成果の一部を公表している点で「おおむね順調に進展している」といえる。 後者の取り組みは,これまで十分に検討されなかった教育行政の「特殊性」を相対的に理解させうる取り組みであり,これが2019年度の研究成果につながれば,学術的貢献をもたらす可能性が高い。以上の点からも,本研究課題は「おおむね順調に進展している」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は以下のように進めたいと考える。 1)2019年6月カナダ政治学会で研究報告 2)福祉国家再編期における教育行政単位のリスケーリング問題の検討 3)2)に起因する,主導的な政策アイディアの転換が教育政策にもたらした影響の検討 本年度の課題は,2017年度と2018年度に取組んだ事例研究やインタビュー調査を中範囲理論に落とし込むことである。具体的には,支配的な政策アイディアの転換をもたらしたマクロトレンドを明らかにしながらも,自治体の取り組みに多様性をもたらす要因を特定していくことにある。
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Causes of Carryover |
研究成果の一部を公表するために,2018年度にエントリーしたカナダ政治学会への参加が2018年12月に承認された。これに要する旅費(複数名)を確保するために一部基金を計画的に積み残している。 2018年度については,連携研究者3名の出張旅費2回分(@奥尻町・札幌市)を計上していた。しかしながら,対象者から2018年度までは個人研究費があるため,2019年度の追加調査や研究成果をまとめるための研究合宿費等に繰り越しをしてほしいとの要望があり,2019年度の出張旅費およびシンポジウム等に充てることにした。あわせて,2018年度末に行った複数のインタビュー調査のテープ起こしなどが残されており,それを執行するために使うことを予定している。これとは別に、アンケート調査に要する費用を計上している(予備調査はすでに実施済み)。
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