2017 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ人権レジームの変化に関する研究-地域紛争の人権侵害を事例として-
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17K03577
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
野田 岳人 群馬大学, 国際センター, 准教授 (20372352)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人権 / レジーム / 欧州評議会 / 欧州人権裁判所 / ロシア / チェチェン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はチェチェン紛争における人権侵害を事例として、冷戦後のロシアをめぐるヨーロッパの国際人権レジームの変化を考察するものである。人権分野では、冷戦時代にソ連に影響を与えた欧州安保協力機構から冷戦後には欧州評議会と欧州人権裁判所へと担い手が交替した。それに伴い、人権保護の射程はより個人的なもの、より人道的なものへと移りつつある。これは国際政治の司法化(judicialization)の現象の一つである。本研究では、第一にヨーロッパ人権レジームの変化と国際政治の司法化の現象を検討する。第二にチェチェン紛争における人権侵害の実態を把握し、その人権侵害の事例が国際政治化する過程を考察する。第三に他の地域紛争における人権侵害の事例と国際人権レジームの関わり方について整理する。 初年度の目標は、本研究のアウトラインを可能な限り正確にスケッチすることであった。まず、国際人権レジームの変化については、アクターを欧州評議会・欧州人権裁判所とロシア政府に限定し、学術的動向を把握した。チェチェン紛争の被害者に関し、欧州人権裁判所の裁判記録やNGO団体による人権侵害の資料などをもとに事実関係をまとめた。また、国連や欧米各国が関与して設置された旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所(ICTY)の成果などについても整理した。 しかしながら、第二の点と第三の点は予定通り進んでいない。第二のロシアにおけるチェチェン紛争の動向調査は受入先との関係で、来年度以降に実施することになった。第三の他地域における人権侵害状況を理解し、冷戦後の地域紛争における人権侵害に関する共通点を探るための地域研究者との意見交換も来年度に予定を変更した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画では、初年度にロシアにおいてチェチェン紛争における人権侵害の状況について調査を行い、より具体的な事例を見つけることを予定していた。しかしながら、受入先との調整がつかず、本年度の調査を見送ったため、人権侵害の実態の把握が遅れている。また他地域における人権侵害の事例研究も、地域研究者との意見交換ができておらず、研究は進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査ができなかった分、裁判関係の資料や公開文書などを整理することができた。2年目は、当初の予定通り、国際法学や比較法学の研究蓄積について検討を行う。特に、国際政治における司法化の流れやロシア国内の裁判所の訴訟や判決の傾向などを把握することが目標となる。他方、1年目で遅れていたチェチェン紛争における人権侵害の実態把握も徐々に進めていく。また、他地域における人権侵害の事例研究について、当該地域の研究者との意見交換会を実施する。
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Causes of Carryover |
今年度予定していたロシアにおける調査が来年度以降に延期になったこと、国内の地域研究者との意見交換会を来年度にしたことにより、これらのための旅費等が今年度執行されず、来年度に繰り越されたためである。前者のロシアへの海外調査については、受入先との調整がつき次第実施する。また、後者の国内での意見交換会はすでに計画をしているので、来年度には実施予定である。
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