2022 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ人権レジームの変化に関する研究-地域紛争の人権侵害を事例として-
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17K03577
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
野田 岳人 群馬大学, 国際センター, 教授 (20372352)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人権 / レジーム論 / ロシア / チェチェン / 欧州評議会 / 欧州人権裁判所 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はチェチェン紛争における人権侵害を事例として、冷戦後のロシアをめぐるヨーロッパの国際人権レジームの変化を考察するものである。人権分野では、冷戦時代にソ連に影響を与えた欧州安全保障協力機構から冷戦後には欧州評議会と欧州人権裁判所へと担い手が交替した。それに伴い、人権保護の射程はより個人的なもの、より人道的なものへと移りつつある。これは国際政治の司法化の現象の一つである。 本研究では、第一にヨーロッパ人権レジームの変化と国際政治の司法化の現象を検討する。第二にチェチェン紛争における人権侵害の実態を把握し、その人権侵害の事例が国際政治化する過程を考察する。第三に他の地域紛争における人権侵害の事例と国際人権レジームの関わり方について整理する。 第一の欧州人権裁判所と第二のチェチェン紛争における人権侵害の実態の解明を2021年度から実施している。欧州人権裁判所におけるチェチェン関係の判決は05年~21年に出されており、総数は297件であった。これらの判決に目を通し、人権侵害の実態や判決の傾向などを分析している。22年度は、21年度の作業を継続し、判決を内容別に分類した。20年度から行っているソヴィエト政権による民族政策の特徴とそれがソ連における民族間関係に与えた影響について歴史的な整理を引き続き実施した。 チェチェン紛争研究では、22年度に新しく入手した資料によって得られた知見をこれまでの研究成果に加えた。その結果、紛争発生前史から第一次紛争が終わる1990年から96年を対象に進めてきた研究を補足することができた。 22年度は本研究の全体像を再度確認するため、ソ連及びロシアと欧州評議会との関係を概観した。ソ連と欧州評議会の関係(1980年代後半~91年)、ロシアと欧州評議会の関係(1992年~96年)について、ソ連及びロシアの外交と内政を中心に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020~21年度に、ソヴィエト政権による民族政策の特徴とそれがソ連における民族間関係に与えた影響について歴史的な整理を行い、1940年代の強制移住と共和国の廃止及び50年代の共和国の再建と民族の帰還に関し資料に基づき考察を行った。2021年度に新しい資料を入手したので、それらも加え、論文にまとめ始めているが、2022年度も公表に至っていない。他方、欧州人権裁判所におけるチェチェン関係の判決の調査では、判決の傾向や特徴を踏まえ、データの取りまとめをしているところである。当初の予定では両者の作業が完了しているはずであったが、まだそれらの分析等が残っているため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1年延長した研究助成期間を使って遅れている研究状況を改善したいと計画している。海外の諸研究機関への訪問が可能となりつつあるので、これまで確認できていない事実関係や二次資料での情報などを確定するため、海外出張を計画している。すでに、チェチェン紛争に関する文献をまとめて収集できたので、これまでの資料と合わせ、分析を深めていきたい。
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Causes of Carryover |
副センター長職(2016年4月~2023年3月)の業務、健康状態の悪化(2022年3月、手術)のため、本研究に割くことができるエフォートが極端に低下し、研究を進めることができなかった。海外渡航も徐々に可能となりつつあるので、未使用額をその経費に充当したい。渡航が難しいようであれば、資料の入手のための費用に充てたいと考えている。
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