2018 Fiscal Year Research-status Report
独裁・紛争後の社会における和解の研究―ラテンアメリカを中心として
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17K03579
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大串 和雄 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (90211101)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移行期正義 / 和解 / コロンビア / ペルー |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画通り、平成30年度は現地調査を実施せず、前年度の現地調査のインタビューを整理するとともに、文献資料に基づいて研究を進めた。 平成30年度は、コロンビアの動きを追うことにやや多めに時間を割いた。コロンビアでは、国内最大のゲリラ勢力FARCと政府との2016年の和平合意に基づき、移行期正義のシステムが設置された。中でも、ゲリラ及び治安部隊の人権犯罪を修復的正義のアプローチで裁き、加害者が真実の解明と賠償に協力すれば服役を免れるという「特別和平司法」(JEP)の仕組みは、国論を二分し、2018年の大統領選挙の争点となった。大統領選挙ではJEPが「ゲリラに甘い」として反対する勢力が勝利し、現在では、国際社会を含むJEPを支持する勢力と、JEPを骨抜きにしようとする政府及び与党との綱引きが続いている。このような流動的状況を背景として、コロンビアでは全国レベルでは和解どころかJEPをめぐってヘイトスピーチが飛び交う状況が続いている。ただその一方で、ミクロなレベルでは、旧武装勢力と犠牲者との和解の実践も観察される。 コロンビアとともに本研究が重点を置くペルーでは、移行期正義は多くの国民の関心事ではない。人権侵害等の罪で収監されていたアルベルト・フジモリ元大統領が、当時の大統領とフジモリ派との政治的駆け引きの結果として2017年末に特赦を受けた際には、犠牲者たちと彼らを支援するNGOが米州人権裁判所にアピールし、結果的にペルーの最高裁が特赦を無効とした。この件に見られるように、ペルーでは移行期正義は、犠牲者を含む一部の活動的なアクターにおおむね限定された関心事となっている。また、ミクロなレベルにおける和解の実践もペルーではあまり観察されない。農村では元ゲリラが出身の共同体に再び受容されていることがあるが、和解というよりは緊張を孕む共存として描写されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の予定通りに進行している。平成30年度末でかなりの未執行の残額があるが、これは令和元年度に実施する現地調査に130万円程度かかると見込まれるため、意図的に残したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年にコロンビアとペルーで現地調査を実施する。その後、研究結果をまとめる。
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Causes of Carryover |
令和元年度にコロンビアとペルーで2ヶ月弱の現地調査を予定している。現地の国内交通費や資料購入費を含めると、この調査には130万円程度の支出が見込まれる。国内の航空機での移動が多くなれば、さらに10~15万円必要になる可能性もある。そのため、平成30年度は必要最小限の支出にとどめ、意図的に次年度使用額を残したものである。
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Research Products
(1 results)