2018 Fiscal Year Research-status Report
EU policy of the EFTA countries
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17K03601
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
小久保 康之 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (60221959)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リヒテンシュタイン / スイス / EU / EEA / 小国 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、リヒテンシュタインおよびスイスで現地調査を実施した。 リヒテンシュタインにおいては、同国の対EU関係および対EEA(欧州経済領域)関係担当者に面談調査を実施すると共に、リヒテンシュタイン研究所において、所長並びに所員と意見交換を行った。リヒテンシュタインは、極小国に分類されるが、EUおよびEEAとの関係については、国際法に則って良好な関係を維持することに努めており、同国国民も対EU関係の現状について好意的に受け止めている状況を明らかにすることができた。同国は、規模が小さいため、EUへの正式加盟国となることは考えておらず、スイスとの関税同盟と両立するように、EEAの枠組に参加することで同国経済の発展を目指しており、対EU関係と小国としての独立がバランスの取れた形で維持されていることが明らかになった。 また、スイスについては、2017年度の調査で、大量移民規制の問題がなし崩し的に移民を制限しない方向に進んでいることや、EUと機構問題に関する枠組条約の交渉が進んでいる状況を把握した。2018年度の調査では、EUとの枠組条約でスイス政府はEUと合意したが、スイス国内での支持が得られないため正式な調印に至らず、国民に対して意見聴取を実施するに留まっている現況について理解を深めた。同枠組条約は、EUとの経済関係を維持していく上で不可欠のものと位置付けられているが、スイスが当初望んでいた中立的な紛争処理メカニズムも導入されず、EUの司法裁判所に紛争処理が委ねられるなど、スイス国民にとっては必ずしも望ましい形ではない。しかも、EU側も、英国のEU離脱問題で甘い態度をとる訳には行かず、対スイス関係においても強硬な姿勢を取らざるを得ない事情がある。これまでスイスは大枠においてEUと良好な関係を築いてきたが、ここに来て対EU関係で厳しい局面に立たされていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度および2018年度の現地調査の結果、スイスの対EU関係の現状は極めて流動的であることが明らかとなり、研究成果として一定の方向性を定めて公表するには時期尚早であると判断したため、研究成果の発表が遅れている。 リヒテンシュタインの対EU関係については、現地調査の結果、大枠については現況を理解することができたが、同国についての研究が少ないため、資料がまだ十分に集まっておらず、こちらも研究成果を公表するには至っていない。 また、研究代表者が極めて重要で秘匿性の高い公務に携わらずを得なくなったことで、2018年の秋以降研究時間を確保することができなくなったことも、研究の進捗が遅れ気味となっている理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
スイスの対EU関係については、2019年度内に当面の状況をまとめて公表する方向で検討している。学術論文として公表できるか、或いは研究ノートの段階に留まるかはまだ定かではないが、いずれかでこれまでの研究成果を公表する。 リヒテンシュタインの対EU・EEA関係についても、不足している資料収集を進め、2019年度内に一定の研究成果として公表することを考えている。 2019年度は、上記2カ国に加えて、アイスランドの対EU関係も調査する計画になっており、3か国について並行して研究を進めると同時に、小国とEUとの関係についての何らかの共通性や国別の差異についても明らかにしたい。
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