2022 Fiscal Year Research-status Report
EU policy of the EFTA countries
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17K03601
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
小久保 康之 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (60221959)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | EFTA / スイス / ノルウェー / アイスランド / リヒテンシュタイン / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も新型コロナウィルス感染症対策のために、海外渡航への様々な制約があったため、現地調査を実施することができず、インターネット上で収集できる情報による現状分析にとどまらざるを得なかった。さらに、ロシア・ウクライナ戦争の長期化により、同戦争以前は休眠状態であると揶揄されていたNATO(北大西洋条約機構)の重要性が注目され、EUの動向に対するEFTA諸国の関心が表に出てくることは少なくなっていった。 加えて、スイスではEUとのバイラテラルな枠組み協定について、国民投票で否決されたことに伴い、EUとの良好な関係構築への道が閉ざされてしまい、今後の同協定の行方は不透明になっている。スイス国民は、EUにスイスが飲み込まれてしまい、自国の自由意思による決定が出来なくなることに不安を感じている模様で、EUと距離を置きたいという主張が広がりつつある。 また、英国のEU離脱とその後の両者間での自由貿易協定の締結により、英国がEU離脱の影響を最小限に抑えることに成功しているように見えることから、EUと一定の距離を保ちつつ、欧州経済領域(EEA)を通じて工業製品に関してEU市場と一体化していることで、ノルウェーやアイスランド、リヒテンシュタインは自国の国益を保全できるとの判断に傾いている。あくまでも主権国家としての独立を維持しつつ、EUとは良好な関係を維持することで均衡を保っていこうとするEFTA諸国の基本姿勢が改めて示されている。 EFTA諸国は、事実上、自由意思による決定が出来ない状況にあり、EUとのさらなる関係強化を追及していかざるを得ないが、各国国民はEU統合による主権への影響に対して敏感になっている様子が伺える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症対策で海外渡航が制限されていたことにより、現地調査を実施することが叶わず、新たな状況についての分析を行う材料を収集することができなかったことや、研究代表者の入院・手術による影響で研究自体を当初の予定通りに進めることができなかったことが、研究の進捗が遅れてしまった要因である。 更に、ロシア・ウクライナ戦争の長期化に伴い、ヨーロッパ情勢の分析がEUを中心としたものから、NATOを中心としたものに移行しており、研究全体の枠組みを今一度見直さざるを得ず、そのために研究全体の進捗がペースダウンしてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、EFTA諸国の対EU外交の基本姿勢について、改めて各国外務省のホームページなどから新しい情報を収集し、英国のEU離脱およびロシア・ウクライナ戦争の影響下にあるそれら諸国の最新の動向をフォローしていく。 十分な資料収集と分析を行ったあと、秋から冬にかけて、現地調査が実施できないか検討し、新型コロナウィルス感染症により中断せざるを得なかった最新動向について情報収集を行いたい。 以上により得られた新しい知見をもとに、研究成果公表に向けて論文の執筆にとりかかる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症対策のために海外渡航が制限され、現地調査が実施できなかったため、支給された研究費を有効に使うことができなかったことが最大の要因である。そのため、研究の推進自体に遅れが生じ、研究費を次年度に繰り越すことになった。
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