2019 Fiscal Year Annual Research Report
Protecting Child Refugees in UK: Is the Politics of "De-Securitisation" possible?
Project/Area Number |
17K03607
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
柄谷 利恵子 関西大学, 政策創造学部, 教授 (70325546)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子ども難民 / 保護 / 第3国定住 / ダブリン条約 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、子ども難民受入に関するイギリスおよび欧州連合(EU)の政策変容の動態を明らかにすることを目的としていた。1990年代以降、国際関係論・国際政治学では、安全保障の研究対象を非軍事分野に拡大するだけでなく、対象となる「脅威」が構築される「安全保障化(securitisation)」過程に注目する研究が急増している。しかし本来、国境を越えるヒトの大半は自らの生命の安全や日々の生活のために移動するのであって、受入国に「脅威」をもたらすことを目的としていない。にもかかわらず、「脅威」の構築に関心が集中することで、脆弱な立場にある移民・庇護申請者の安全が一層脅かされる恐れがある。 本研究では、「脅威」とみなされる移民・庇護申請者の中で、「保護」の対象としての認識を確立しつつある子ども難民に注目した。子ども難民については、厳格な庇護政策を進めるイギリスにおいてでさえ、第3国定住プログラムの枠内で受入枠が設置されている。さらにダブリン条約の下、子ども難民が家族と結合する権利が尊重されることになっている。しかしイギリスでは、2016年の国民投票後、EUとの離脱協議が長期化した結果、2020年4月現在でも、ダブリン条約の扱いを含めた今後の庇護政策の詳細は確定していない。この点は、本研究が計画されていたときには予期されていなかった。 このような状況の下、以下の3点について実績をあげることができた。第1がイギリスにおける入国管理及び庇護政策の歴史的発展過程の解明、第2が庇護政策における第3国定住プログラムの現状分析、第3が子ども難民の扱いに対するダブリン条約およびイギリスの政策変容の調査であった。第1点については日本語及び英語でそれぞれ論文を、第2及び第3点については調査結果をまとめた研究ノートを発表した。くわえて研究セミナーや学会での部会を企画し、知見の発信・共有に努めた。
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