2017 Fiscal Year Research-status Report
負債借り換えリスク・負債支払い能力の相互作用と企業の財務・投資決定
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17K03621
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小佐野 広 京都大学, 経済研究所, 教授 (90152462)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 負債借り換えリスク / 負債借り換え能力 / 資本構成 / 負債償還期限 |
Outline of Annual Research Achievements |
Lelandタイプの定常的な負債期間構成モデルに、キャッシュフロー・ショックという「企業の短期流動性に関する不確実性」と長期的な平均収入に基づく「企業の長期支払い能力に関する不確実性」という二つのタイプの不確実性を導入することにより、基本モデルを構築した。ここでは、キャッシュフローの流列をブラウン運動で表わすので、企業の短期流動性に関する不確実性の程度はブラウン運動のボラティリティ・リスク(確率変動部分)でとらえられているものとした。その一方、企業の長期支払い能力に関する不確実性は、ドリフト項(動学方程式で平均値の動きを表す部分)の不確実性、すなわち、ドリフト項が大きな値をとる場合と小さな値をとる場合の二つの可能性があるという形で定式化した。 ドリフト項の真の値に関しては企業も投資家も事前にはがわからないものとしているが、各時点で企業が生み出すキャッシュフローを企業と投資家が観察することによりその事後的な期待値が連続的に改訂されていくような学習プロセスを組み込んで、ドリフト項の各時点での事後的な期待値を状態変数とした連続時間の確率微分方程式で表されるモデルとして定式化することができた。 結果として、負債の借り換え」と「長期支払い能力の評価に関する学習プロセス」の両者を同時に考察することにより、近時の金融危機において見られたような負債の借り換えリスクと企業の支払い能力との間に生じる相互作用を内生的に導き出すことできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドリフト項の各時点での事後的な期待値を状態変数とした連続時間の確率微分方程式で表されるモデルに定式化することができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
確率微分方程式自体を直接的に解いていく。しかし、定性的な結果が得られない部分については、数値計算に詳しい大学院生を雇用する等して数値計算を実行する。
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