2017 Fiscal Year Research-status Report
自己に関する学習が交渉を伴う2方向サーチ・マッチングに与える影響
Project/Area Number |
17K03639
|
Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
丸山 亜希子 流通科学大学, 経済学部, 准教授 (00508715)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 不完全自己認識 / 移譲可能効用 / ミスマッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は移譲可能な効用の仮定をおき、主体間で交渉が生じるような労働市場等に、自己に関する学習の議論を拡張することを目的とする。29年度は2方向サーチにおいて片側に不完全自己認識主体がいる場合を分析し、自己への学習が、意思決定と市場で誰と誰がマッチするのか(ミスマッチが生じるか)、別れ(separation)にどのような影響を与えるのかを分析することを目標としていた。片側不完全自己認識の状況は、例えば企業はそれまでの社会的活動を通じて自分のタイプをよく知っているが、労働者は経験不足から、自分のタイプを把握できておらず、労働者だけが企業からのオファーや拒否から自己についての学習するような状況に相当する。 まず、本研究では基本モデルとして、垂直方向に事前に異質な2タイプの主体を考え、自己のタイプについての事前信念が市場に参入する人達のタイプ分布に依存するものとしたランダム・2方向サーチモデル(労働市場で言うと、企業側と労働者側それぞれが相手を探すモデル)を構築した。そして、ベンチマークケースとして完全情報時について分析を行い、結果を導出し、その後、不完全情報時の結果と比較することで、不完全自己認識による影響を明らかにするという手法をとった。特に、サーチ中の学習行動、他者の戦略の変化、市場均衡でのマッチング(誰と誰がマッチするか、および市場のマッチ数)の変化、別れの数の変化を調べることで、自己に関する学習が市場全体にどのような影響を与えるのかを調べた。そして、譲渡可能な効用の前提として逐次交渉を想定したときには、交渉の際に不完全自己認識主体は自己のタイプに気づき、マッチングよりも別れを選びやすくなり、ミスマッチが減り、市場のマッチ数が変化するという結果が導出された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度は、一番単純な主体が2タイプの場合についての基本モデルの構築を行い、分析したかった内容についても概ね結果が得られたと考えている。 しかし、タイプ数が増えると信念の種類も増えるため、モデルの複雑化が予想された。このため、29年度は主体のタイプを2タイプとしたモデルについてのみ分析を行ったが、タイプ数が2タイプであることに依存する結果もいくつか得られているため、モデルの複雑化との兼ね合いをみながら、場合に応じて3タイプに拡張した分析を今後は付け加えたいと考えている。 交渉の設定については、29年度は学習機会を増やすと予想される逐次交渉のケースについてのみ分析を行い、当初計画していたナッシュ交渉のケースについての分析が課題として残されている。しかし、逐次交渉のケースについては当初の予定通り、離職、離婚などの別れを認め、別れた者が市場に戻ってくるような設定とし、その行動によって市場マッチングがどのように変化するのかも調べ、それらについての結果は得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
主体が2タイプの基本モデルの構築は終え、分析結果は概ね得られているが、2タイプに依存しているいくつかの結果については、3タイプに拡張して分析を付け加える。その後、学会発表やセミナー発表などを通じ、他の研究者のコメントを反映しながら論文の作成を行い、英文査読付き雑誌に投稿する。この研究が終わり次第、両側の主体(労働市場なら、企業側と労働者側の両者)が不完全自己認識のケースの分析について着手する予定である。
|
Causes of Carryover |
論文執筆に当初の予定より時間を要し、英文校正費用1回分の費用を年度内に使用しきれなかった。
|