2017 Fiscal Year Research-status Report

スウェーデンの経済学説を中心とした北欧的社会科学理論の研究

Research Project

Project/Area Number	17K03643
Research Institution	Nagoya City University
Principal Investigator	藤田菜々子名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20438196)
Project Period (FY)	2017-04-01 – 2022-03-31
Keywords	ストックホルム学派 / スウェーデン・モデル / ミュルダール / 福祉国家 / 北欧モデル
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、スウェーデンの経済学説・経済思想に焦点を当て、スウェーデン・モデルを支える経済的・政治的・社会的な思想基盤を明らかにすることから、より広く北欧モデルを支える社会科学理論を探究することを目的とする。研究の初年度となる平成29年度は、研究実施計画に従い、1930年代のスウェーデンにおける「ストックホルム学派」の形成をもたらすことになった経済学界の環境や人物配置に注目し、とりわけ「旧世代」の学説、ならびに「旧世代」・「新世代」間の学問的継承と対立について研究した。本年度4月にスウェーデンの政治経済に詳しいSven Hort博士の講演（法政大学、名古屋大学）に参加し議論したことで、スウェーデンの福祉国家の形成過の特徴や市民社会概念からのアプローチを知ることができ、関連文献の調査を進めることになった。加えて、単独著作（『福祉世界』）刊行や寄稿を依頼された日瑞外交樹立150周年記念論文集の準備に向けても、ストックホルム学派に関する諸文献、グンナー・ミュルダールの学説、周囲との対比におけるミュルダールの学説の特徴について研究を進めた。本年度の研究成果として次の2点を刊行・発表した。（1）著書：『福祉世界――福祉国家は越えられるか』中央公論新社、2017年10月、（2）学会発表：「ミュルダールの経済学説の背景にあるスウェーデン」北ヨーロッパ学会第15回記念大会（共通論題、早稲田大学）、2017年12月2日。また、本研究に関係して、伊東光晴『ガルブレイス』・根井雅弘『ガルブレイス』に対する書評を『経済学史研究』59（1）、2017年7月に発表した。日瑞外交樹立150周年記念論文集の刊行は次年度（平成30年4月）に持ち越しとなった。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 当初の研究計画に沿って、関連文献の渉猟と読解を進め、研究成果を発表することができているため。
Strategy for Future Research Activity	次年度以降の研究計画に従い、ストックホルム学派の全容解明とスウェーデン・モデルの形成過程について研究を進め、北欧の社会科学理論の特徴を明らかにすることを目指す。ただし、研究計画では単独での研究遂行を考えていたが、スウェーデン理解を深め、スウェーデンから北欧へと研究の範囲を広げるために、他者からの研究協力の可能性をより積極的に模索する予定である。