2017 Fiscal Year Research-status Report
レジーム・スイッチングモデルの統計的推測理論の開発
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17K03653
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下津 克己 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50547510)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レジーム・スイッチングモデル / 最尤推定量 / 漸近分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、レジーム・スイッチングモデルにおける統計的推測理論の発展である。レジーム・スイッチングモデルは、構造変化・非線形性・強従属性などの時系列の特徴をよく記述することができるため、経済学・ファイナンスの分野において非常に幅広く利用されている。経済学では、多くの場合、レジーム・スイッチングモデルのパラメーターは最尤法で推定されている。実証研究では、Hamilton(1989)により提唱された、現在観測される変数の分布が現在と過去のレジームに依存するモデルが非常に多く使われている。しかしながら、このようなモデルの最尤推定量の漸近分布は、未だに解明されていなかった。この結果、実証研究で日常的に利用されている、t検定やWald検定の正当性は、確立されていなかった。
本年度は、実証研究における仮説検定の正当性が損なわれている現状を解決するために、Hamilton(1989)により提唱されたモデルのパラメーターの最尤推定量の漸近分布を導出した。さらに、フィッシャー情報行列の一致性を導出して、t検定やWald検定の正当性を確立した。さらに、大規模なコンピューター・シミュレーションを行い、現実的なサンプルサイズの下での最尤推定量の分布が、漸近分布によって良く近似されることを検証した。
参考文献 Hamilton, J. (1989), A New Approach to the Economic Analysis of Nonstationary Time Series and the Business Cycle. Econometrica 57, 357-384.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要目的は、以下の2つである。(1)Hamilton(1989)により提唱されたレジーム・スイッチングモデルのパラメーターの最尤推定量の漸近分布を導出する。(2)コンピューター・シミュレーションにより、(1)で導出した最尤推定量の漸近分布が、有限標本下での推定量の分布をどの程度良く近似しているかを検証する。本年度は、(1)(2)を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、レジーム・スイッチングモデルにおけるレジームの数に関する新しい統計的推測理論の開発を行う。尤度比検定を提唱し、尤度比検定統計量の漸近分布を導出する。さらに、大規模なコンピューター・シミュレーションを行い、現実的なサンプルサイズの下での尤度比検定の実用性を検証する。
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Causes of Carryover |
平成29年度に、予定以上の旅費・物品の支出が見込まれたため、300,000円の前倒し支払請求をしたが、実際には前倒し支払請求のうち200,000円程度のみを使用したため、平成30年度使用額が生じた。平成30年度使用額ならびに平成30年度分として請求した助成金は、トナー・カートリッジ等の物品の購入、学会参加への旅費、英文校正の費用、リサーチ・アシスタントへの謝金などに使用する。
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