2018 Fiscal Year Research-status Report
レジーム・スイッチングモデルの統計的推測理論の開発
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17K03653
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下津 克己 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (50547510)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レジーム・スイッチングモデル / 最尤推定量 / 漸近分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、レジーム・スイッチングモデルにおける統計的推測理論の発展である。レジーム・スイッチングモデルは、構造変化・非線形性・強従属性などの時系列の特徴をよく記述することができるため、経済学・ファイナンスの分野において非常に幅広く利用されている。
実際の応用においてレジーム・スイッチングモデルを推定する際には、レジームの数をデータから決定することが特に重要となる。しかしながら、レジーム・スイッチングモデルの尤度関数は特殊な構造を持つため、レジームの数に関する統計的推測が非常に困難であることが知られている。特に、各レジームにおける時系列の分布が正規分布に従う場合は、フィッシャー情報行列のランクがパラメーターの値に依存して変化するため、対数尤度関数の漸近分析は著しく困難であった。その結果、レジームの数に関する統計的推測の実用的な手法は未だに確立されていなかった。
本年度は、フィッシャー情報行列のランクがパラメーターの値によって変化する場合にも適用可能な対数尤度関数の近似手法を確立し、レジーム・スイッチングモデルの対数尤度関数の漸近分析手法を確立した。この結果を用いて、レジームの数をデータから決定する実用的な手法として尤度比検定を提唱し、尤度比検定統計量の漸近分布を導出した。さらに、中規模なコンピューター・シミュレーションを行い、現実的なサンプルサイズの下で、尤度比検定が実用性を持つことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主要目的は、以下の2つである。(1)レジーム・スイッチングモデルにおけるレジームの数に関する尤度比検定統計量の漸近分布を導出する。(2)中規模なコンピューター・シミュレーションにより、現実的なサンプルサイズの下で尤度比検定が実用性を持つことを確認する。本年度は、(1)(2)を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、レジーム・スイッチングモデルにおけるレジームの数に関する尤度比検定統計量について、大規模なコンピューター・シミュレーションを行い、尤度比検定の実用性を検証する。
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Causes of Carryover |
平成30年度の消耗品の支出がが予定より少なかったため、平成31年度使用額が生じた。平成31年度使用額ならびに平成31年度分として請求した助成金は、トナー・カートリッジ等の物品の購入、学会参加への旅費、英文校正の費用、リサーチ・アシスタントへの謝金などに使用する。
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