2022 Fiscal Year Annual Research Report
A qualitative and quantitative analysis of the impact of labor market policies on the behavior of non-regular workers with diverse employment objectives
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17K03779
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
増井 淳 創価大学, 経済学部, 教授 (50409778)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 女性の労働市場参加 / 非正規雇用 / 企業による職業訓練提供 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、最低賃金の引き上げが労働市場参入・退出に関する女性の意思決定にどのような影響を及ぼすかを分析した(Masui (2023))。最低賃金の引き上げは、特に低技能労働者にとって働くことの便益を増加させ、就業を促すことが期待される。しかし、日本の労働市場の状況を踏まえた数量的分析の結果、この政策は社会厚生を増やし結婚・出産等のライフイベント発生時に非労働力化する女性就業者数を減らす一方で、労働市場全体の就業者数を減らすことが示された。最低賃金の引き上げは企業による採用基準の引き上げを伴うため、仕事に就ける働き手の数が減ることになる。低技能労働者は非正規雇用で働いている可能性が高く、それらの労働者は十分な職業訓練の機会を得られていない。低技能労働者の生産性を高め採用対象として認められるために、企業による訓練提供と労働者による訓練受講を促す取り組みの両方が必要であることが示唆される。
またそれ以前の研究成果として、Masui (2022) では非正規雇用者に対し企業が自発的に職業訓練を提供するのはどのような状況かについて、構築した理論モデルに基づく数量的分析(イタリアの労働市場を反映)を行った。主な結果として、非正規雇用者の訓練費用を減らす政策は、訓練に参加する同労働者の割合を増加させる一方で、正規雇用者の割合を減らし労働生産性を低下させることが示された。もし訓練費用を下げる形で非正規形態で働く女性の職業訓練参加率を高めようとする場合、正規形態で働く女性の比率が下がり、ライフイベント発生時の離職・非労働力化傾向が強まる恐れがある。どのような政策の実行が望ましいかについては、(i) 女性労働力の存在、(ii) 労働市場への参加に関する意思決定の内生化、(iii) 正規-非正規の雇用形態の区別と職業訓練の提供、を同時に考慮する必要がある。この点については今後の課題とする。
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Research Products
(2 results)