2018 Fiscal Year Research-status Report
Applications of the share function approach to public economics
Project/Area Number |
17K03781
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上田 薫 南山大学, 経済学部, 教授 (40203434)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | collective contest / group heterogeneity / selective incentives / appropriation / disaster risk reduction |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の基本的目的は、構成員間の異質性において既存研究より豊かな構造を持った集計的モデルの分析を、シェア関数アプローチの使用によって実現することである。今年度は、昨年度に公刊した以下の論文を国際的学会において報告した。 論文 “Selective Incentives and Intra-Group Heterogeneity in Collective Contests.” 概要:集団間コンテストにおいて各集団が個別報酬制を内生的に決定する場合の分析に構成員の異質性を導入したモデルを構築した。個別報酬制を従来のようにコンテストのプライズの分け前として(プライズ・シェアリング)ではなく貢献の費用のペイバックとして(コスト・シェアリング)定式化することで、異質な構成員による貢献を、個別報酬制ルールをパラメータとする関数として容易に表現できるようになった。これにより集団間コンテストを各グループのリーダーをプレイヤーとした疑似戦略形ゲームとして容易に扱えるようになり、シェア関数アプローチを疑似戦略形に適用可能な形に一般化することによって均衡の存在と一意性の証明が実現した。また、個人間の異質性と個別報酬制の特徴づけの関連の詳しい分析が可能になり、プライズの評価における異質性は個別報酬制に影響を与える一方、貢献能力に関する異質性は影響しないことが明らかになった。 報告学会・場所:2018年SAETコンファレンス 6月11日~13日。台湾 Academia Sinica(中央研究院)。 報告の際の質疑応答は有益であった。また、コンファレンス期間中にボストン大学の小西秀男教授とコンテスト理論の選挙モデルへの応用に関してディスカッションを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は検討を予定していた発展方向の一つだけに突出した進展があったが、その分だけ他の発展方向に関する検討は後回しとなったため、2018年度は当初の計画に立ち戻り、構成員間の異質性を持つ集団に関する公共財の自発的供給(または共有資源)および集団間コンテストに関するモデル構築の他の有力な方向の可能性について改めて検討を行うこととした。 いくつかの予備的検討の試みを行い、①複数貢献手段導入の方向では生産・収奪モデルの集団コンテストに一般化したモデル、②危険回避度導入の路線においては災害リスク低下への自発的貢献モデルの構築に至った。これらのモデルにおける予備的結果に関しては、小西教授および共同研究者であるバーイラン大学のNitzan教授に示し、幾つかのコメントを得ている。特にNitzan教授とはHIASの客員研究員として来日した機会を利用して科研費により名古屋に招聘し、今後の見通しに関して協議を行った。さらに、彼の最近の研究をコンテストに応用するアイディアが提示され、新たな共同研究のテーマとすることが話し合われた。 以上のように、年度当初に検討を開始した複数の方向について一定の予備的成果を得て、論文作成への準備が順調に進んでいるという現状にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
①生産・収奪モデルの集団コンテストについて:生産・収奪モデルは、Jack Hirshleifer によって無政府状態のもとでの経済活動を分析するために考案された、複数の経済主体から成るモデルである。各経済主体は自分の保有する資源(時間、資金 etc.)を「生産」と「収奪」の二種類の活動に割り振る。「収奪」の対象が他集団の生産物であるような複数集団間の生産・収奪モデルはこれまで試みられたことが無く、シェア関数アプローチによって、こうしたモデルの構築と分析を行う。
②災害リスク低下への自発的貢献モデルについて:公共財の自発的供給モデルに危険回避度を導入し、災害リスク低下への自発的貢献モデルを構築する。災害リスクは災害発生の確率と災害の大きさの積として表せるが、この両者の低下にグループの構成員が自発的に貢献する場合について分析したモデルはこれまで例がない。こうしたモデルをシェア関数アプローチの適用によって取り扱い可能なものにし、自発的貢献の程度に影響を与える要因について検討を加える。
①、②のいずれに関しても、年度末までに論文の形にすることを目指す。共同研究者であるNitzan教授とは新たな共同研究も視野に入れつつ定期的な連絡を継続し、昨年同様に氏の来日が可能であるならば、その機会を利用して名古屋に招聘したい。それが困難な場合には報告者の方からバーイラン大学を訪問することも考えている。Nitzan教授から示唆されたモデルについても、その可能性について検討を加えていく。
|
Causes of Carryover |
当初は年度後半にもう一度海外での報告を行うことを考えていたが、年度半ばに勤務先において予定外の役職に就くことになり、取り止めざるを得なくなったことから消化しきれない予算が発生した。2019年度において資料費として消化する予定。
|
Research Products
(1 results)