2020 Fiscal Year Annual Research Report
Applications of the share function approach to public economics
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17K03781
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上田 薫 南山大学, 経済学部, 教授 (40203434)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | aggregative games / disaster risk / risk aversion / public goods / voluntary provision |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の基本的目的は、構成員間の異質性において既存研究より豊かな構造を持った集計的モデルの分析を、シェア関数アプローチの使用によって実現することである。今年度は研究計画の最終年度であったが、新型コロナ感染症の流行の中で海外はもとより国内の移動も制限されたこと、勤務する教育機関の新型コロナ対応に伴い行政・教育両面の臨時的業務が増大したことなどにより、当初に期待していたほどの研究の進捗を実現することは出来なかった。公刊に至ったのは紀要に掲載した以下の一本のみであった。これは計画のうち②危険回避度導入の路線に沿った研究の中間的成果であり、今後の一般化や応用の準備としてモデルの基本的特徴を明らかにすることができたと考えている。
論文 『自発的防災行動の単純モデル』 概要:洪水、山火事、テロなど様々な災害のリスクは潜在的被害者の集団全体が負うものであり、災害リスクの低下をもたらす防災活動は潜在的被害者集団にとっての公共財としての側面を持つ。この論文では防災行動の公共財的効果として、費用をかけて被害規模を低下させる「被害削減」行動と、費用をかけて発生確率を低下させる「リスク削減」行動という区別を行い、個人がそうした活動の水準を自発的に選ぶ場合の結果について分析した。 分析の結果、いずれのタイプの自発的防災行動のモデルにおいても均衡の存在と一意性が確認された。両者を比較すると、限界費用が小さい場合にはリスク削減型防災行動の水準が被害削減型のそれより大きくなるが、限界費用が高くなるとこの大小関係は逆転する。また、リスク回避度が小さい場合にはリスク回避度上昇で双方のタイプの防災行動が増加するが、リスク回避度が十分に大きくなると逆に減少させる。また、中間的なリスク回避度の領域では、その上昇がリスク削減型防災行動の水準を高める一方で被害削減型防災行動の水準を低下させる場合が生じる。
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Research Products
(1 results)