2018 Fiscal Year Research-status Report
社会保障給付の世代間配分のあり方に関する研究~所得格差と経済成長の観点からの分析
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17K03791
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
安岡 匡也 関西学院大学, 経済学部, 教授 (90437434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 真敏 関東学院大学, 経済学部, 講師 (10533648)
迫 一光 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (30547360)
伊藤 健宏 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (40364418)
塩津 ゆりか 愛知大学, 経済学部, 准教授 (60599182)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 介護保険制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研の研究テーマは「社会保障給付の世代間配分のあり方に関する研究~所得格差と経済成長の観点からの分析」であるが、本年度は特に介護に対する給付の分析を中心に研究発表をすることができた。 介護については、市場で供給されている介護サービスを利用する介護と家族が時間を使って行う家族介護がある。後者の家族介護は時間を使うために、もし、家族介護が若年世代によって行われるのであれば、若年世代が労働時間を減らして介護を行わなければならない。しかしながら、労働時間を減らすことは所得が得られないという状況をもたらすこととなり、貧困に陥る可能性を高めてしまうことになる。従って、政策により家族介護を市場で供給されている介護サービスにシフトさせることは、そのような貧困に陥る可能性を低めるという点から望ましいと考えられる。 本年度では、家族介護から市場で供給されている介護サービスへのシフトの政策に関連する研究論文を雑誌に3本掲載することができた。市場で供給されている介護サービスを政府が代わって供給する政策によって家族介護時間が減り、労働供給時間が増え、それが社会的にも望ましいという結果をまず導出することができた。続いて、市場で供給されている介護サービスの利用に対する補助は若年世代の労働供給を促進することを示し、また、介護労働市場で働く労働者の賃金水準も引き上げることも示した。 以上の結果は、少子高齢化において労働力が不足するという懸念の中で、介護に対する給付政策を行うことが労働力不足を解消することを示し、また、介護労働市場での低賃金の問題を部分的に解決しうるものとして考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定期的に研究論文を学会で報告することができ、また査読付き雑誌に掲載することもできているので、研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度においては、これまでの理論研究に加えて、様々な分野における研究手法に基づいた研究にも挑戦する。具体的に、2018年度においては産業連関分析の手法に基づいて、介護保険制度における自己負担割合の変化が地域経済にどのような影響を与えるのかを考察した。この研究結果については2019年度に国内の査読付き雑誌への掲載が決まっているが、2019年度も引き続き、より精緻化した産業連関分析に関する研究を進めて行く。 2つ目は数値計算を使った研究である。DSGEモデルというマクロ経済学で使われているモデルを用いて、税負担の増加がマクロ経済にどのような影響を与えるかを考察したが、政策を行うことによってどのような影響が見られるのかを数値で確認できる意義は大きい。この数値計算のためには実証的手法などに基づいたパラメータの設定が必要であるが、パラメータが現実のデータをもとにしているため、政策インプリケーションは非常に意味のあるものになると思われる。この研究も2019年度では引き続き進めて行く。 これらの研究は1人による単独研究では不可能なため、これまでと同様、引き続き、共同研究を積極的に進めて、分析を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
英語論文完成のタイミングで英文のネイティブチェックを掛ける必要があるが、年度内の予定がずれ込んだため、年度内の執行ができなくなった。次年度使用額は新年度において当初の予定通り英文のネイティブチェックのための支出に当てる予定である。
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Research Products
(22 results)