2019 Fiscal Year Research-status Report
The effects of childcare enrollment on child and parents
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17K03792
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
前田 正子 甲南大学, マネジメント創造学部, 教授 (20596192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 道人 立教大学, 経済学部, 准教授 (10749162)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 認可保育所 / 保留世帯 / 認可外保育所 / 育児休業 / 入所確率 / 就労 / 家事育児分担 / 病児保育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は待機児童問題を抱える自治体の認可保育所への入所申請世帯に対する全数アンケート調査結果を用いて、1.保育所入所を巡る親たちの対応や苦悩、2.実際にどのような世帯が認可保育所に入所できているのか、3.保育所に入所できたか保留になったかの違いでその後の保護者と子どもの状況にどのような違いが出るのか、を見出すことを目的としている。 2019年にはそれぞれに関してディスカッションペーパーなどをまとめたが、以下のことが見出された。①保護者は保育所への入所確率を上げるために、先んじて認可外保育所に子どもを預けて職場復帰をしたり、あえて就労時間を長くする、などの行動をとっていること、 ②保護者の悩みは職場環境、労働時間、子育てと仕事の両立、家庭内の夫婦の家事育児分担、子育ての経済的負担など多岐にわたっており、保育所だけでは解決できない問題を多く抱えていること、③調査対象自治体では申請時に母親が常勤の就労者や育児休業中の場合には75%以上の入所率であるのに対して、母親がパート・アルバイト就労や自営業の場合には60%程度の入所率にとどまっており、求職中の場合の入所率は40%程度であったこと(つまり常勤者であっても2~3割の人が保留となっている。)、④母親の所得水準と入所率の関係は単線的なものではなく、母親の申請時の所得が高くなるほど入所率は上昇するが、一定以上の高所得の場合の入所率はむしろ低くなっていたこと、⑤入所世帯と保留世帯の回答者(ほとんどが母親)の抑うつ度を比較すると、入所世帯の回答者の抑うつ度のほうが低い傾向がみえる、ことなどが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度においては、2018年にデータ入力およびデータクリーニングしたデータの分析を進めた。入力においての間違いが見つかり、再入力とデータクリーニングに時間がかかった。その後2019年度にデータ分析の成果としてまとめたものは第1に3本のディスカッションペーパー(立教大学経済研究所において公開されている)である。その後、それぞれのディスカッションペーパーの修正・加筆をへて一つは論文として大学の紀要に掲載され、2つ目と3つ目に関しては加筆修正を進め、学術雑誌への投稿中である。さらに、データの分析は進めており2020年度においても継続して新たな論文の執筆を目指している。 また2019年10月には保育料の無償化が実施されたことから、首都圏の自治体の協力を得て、「保育料無償化と保育所入所申請の関係について」調査を実施した。市役所の窓口にて申請をした全保護者にインターネットを利用して回答してもらうことを呼び掛けた。ただし回収率が約2割にとどまり、一般的な傾向を見出すのは難しい状況である。だが無償化に関しては批判的な意見と肯定的な意見と割れている状況は把握できた。 さらに2018年に実施した未就学児を持つ保護者へのグループインタビューの分析結果は研究会で報告ののち、現在、学会誌への投稿を目指して論文作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きデータの分析を進め、さらに論文を作成することを目指す。 現在、2本の論文が学術雑誌に投稿中であり、他、1本が執筆中である。さらに様々な分析視点から複数は論文が執筆可能と考え、データ分析を進めている。2020年度は最終年度となるため、論文を作成すること、特に今年度は英文での論文執筆に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
保育料の無償化に関する調査は印刷アンケートを配布回収する予定であったが、研究者が作成したインターネットアンケートで実施することとなり、調査票印刷代やデータ入力費がかからなかったため。また研究会開催の交通費も、交通費が他の事業から出たため、使用する必要がなかった。 2020年度はコロナウイルスの影響が収まり、学会などが開催されれば、国内外の学会に参加すること、データ分析をさらに進めること自治体へのヒアリング調査を実施することなどを計画している。
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