2018 Fiscal Year Research-status Report
Forecasting Exchange Rates using Time-Varying Econometric Models
Project/Area Number |
17K03809
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 幹夫 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (70184695)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 顕彦 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (80610112)
和田 龍磨 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (20756580)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 外国為替市場 / 先物プレミアムパズル / ベクトル誤差修正モデル / 時変計量経済モデル / ブートストラップ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度,本研究課題の分析を進めていくために不可欠な時変計量経済モデルに基づく統計的推論に関する理論研究を行ったのは,研究代表者の伊藤と研究分担者の和田である.特に,和田は,伊藤がこれまで展開した状態空間モデルを単純な線形回帰にモデルに帰着させてモデルの統計的推測を行うというアイデアについて,以下のように展開した.(1) 状態空間モデルで扱える典型的なARモデルの時変パラメータ版について,本研究課題の接近をとる場合の一般化最小自乗推定値(GLS estimates)が,よく知られた逐次推定型の推定方式であるカルマン・スムーザーと同一となることを確認した.(2) さらに最尤推定に基づくカルマン・スムーザーの推定値がしばしば抱えるPile Up問題が本研究で採用されるGLS推定では大幅に軽減されることをシミュレーションによって示した. 一方で伊藤は,時変計量経済モデルをGLS推定を行う場合に最重要となる,モデルをデータに当てはめた後に得られる残差から共分散構造を精度良く計算するためのRプログラムの作成を行った.このプログラムを作成する過程で,上記(2)で行われたシミュレーションを実施する際に避けて通れない複数演算コアを有するコンピュータ上で並行計算を行うための基本的な実行枠組みを構築できた. また研究分担者である野田は,前年度に引き続き,外国為替市場におけるドル建て為替レート,長期利子率,短期利子率,国債利回り,株価指数,物価指数などのデータを収集・整理し昨年度のデータセットの拡充した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時変計量経済モデルに基づいた統計的推論の方法開発を2018年度に行った和田と伊藤は,「研究実績の概要」の項に示した(1)と(2)に集中する形で研究を遂行することができた.このことにより,具体的には,以下のことが明らかになった.(a)最尤推定を使わないやり方で,状態空間モデルに帰着しうる,時変パラメータを持つ大抵の時系列モデルも,統計的推測が可能となる.(b) 線形モデルのGLS推定という形で係数パラメータの時間的変化を捉えたときの統計的推測を行うための統計量をブートストラップ法他のシミュレーション的技法で得る場合,モデルの線形性ゆえに最尤法を用いる場合と比べて簡単に実装が可能となる.実際,推定されたパラメータに関してブートストラップ法に基づく検定を行うためにためのコンピュータプログラムは統計言語Rで伊藤が書き下している.当該コンピュータ・プログラムは複数演算コアを有するコンピュータで並行計算を行うように設計されているために,演算コア数が大きく同時に主記憶容量が大きいコンピュータを使用すれば,外国為替レートに関連するデータの種類・サンプルサイズがどれだけ大きくても,実証分析に対応しうる枠組みが得られる.また,実証分析のデータ・セットの拡充を担当する野田も順調に必要データセットの作成を続けている.以上各点で,外国為替の予測を実行し既存研究の成果に対する優位性を示すという当初も目的の実現にむけての,本研究の達成度は概ね良好であると判断される.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者である伊藤は研究分担者である和田および野田と共に先進各国(日本,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランス,カナダ,イタリア)の外国為替市場におけるドル建て為替直物レートならびに先物為替レート,長期利子率,短期利子率,国債利回り,株価指数,物価指数などのデータを用いてより詳細な計量分析を行うための具体的なモデルをいくつか作成する.また既存の為替レート予測モデルのうち定評があるものを選び出し予測モデルの性能比較を行ない結果を論文の形にまとめ研究成果物とする.その際伊藤は,上記「現在までの達成度」の理由の部分で示した統計的分析枠組みが現在いうところのビッグデータに対応しうることに鑑み,近年注目を集める機械学習モデルも視野に入れた形の改良も同時に行ない,研究成果物に加えることする.研究成果物については論文の形にまとめたうえで,国内外の学会などで報告して,専門家による評価を仰ぎ国際的な学術雑誌に公刊をめざす.
|
Causes of Carryover |
前年度,参加を予定していた2019年3月28日ならびに29日にアメリカ合衆国ダラス市で開催されたSociety for Nonlinear Dynamics and Econometrics の年次大会で発表する予定の論文が不採択になり,伊藤が参加を断念したためである.2019年度は,国際学術雑誌への論文投稿に係る論文投稿料および英文校閲料に予算をより多く計上する.
|
Remarks |
Tatsuma Wada reported "An Alternative Estimation Method for Time-Varying Parameter Models" as an invited lecturer at Wayne State University, Department of Mathematics, in 2018.
|