2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K03810
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / 企業金融論 / 取締役会 / 機関投資家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は2014年以降に日本で導入されたスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの2つを支柱とするコーポレートガバナンス改革が、日本の企業統治システムに対してどのような変化をもたらし、また企業行動や業績をいかに変化させたのかを検証した。スチュワードシップ・コードに関しては機関投資家と企業の対話の促進などを通じて、機関投資家の影響力を強めたのかを検証した。スチュワードシップ・コードの導入の効果として、GPIFなどのアセットオーナーの関与の増加、伝統的機関投資家(信託銀行・投資顧問)のエンゲージメント体制の強化、生命保険会社の「物言う長期株主」へのゆるやかな移行、アクティビストファンドの活動の再活性化が生じていた。コーポレートガバナンス・コードに関しては、原則4-8で独立社外取締役を2名以上設置することが求められたことの効果を中心に検証した。この原則は順守しない場合はその理由を説明する義務が生じる、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレイン・ルールであったが、ほとんどの企業が説明ではなく順守という対応をとっていた。これにより多くの企業で社外取締役が増加したが、この増加は平均的には企業業績に統計的に有意な影響を与えていなかった。一方で、機関投資家持分の低い企業や創業者一族が大きな影響力を持っているファミリー企業などの資本市場の規律付けが弱いと考えられる企業では、そうでない企業よりも社外取締役が増加することにより企業業績が改善していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
取締役会に関するデータの構築が順調に進み、それを用いた分析を行いワーキングペーパーを出すことができた点では、順調に進展していると考えている。一方で社外取締役のインセンティブに関するデータがまだ終わっておらず、また研究を進める上で新たなデータ収集の必要性がも生じたため、これらに関して作業を進める必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず社外取締役のインセンティブに関するデータ収集をさらにすすめていく。具体的には社外取締役の兼任状況や持株に関するデータを役員四季報などから収集し、報酬に関するデータを財務データベースから収集していく。収集にあたってはリサーチアシスタントを雇用し、収集の補助をして頂くことも検討している。
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Causes of Carryover |
本年度は昨年度までに作成したデータベースに基づき、その成果をワーキングペーパーにまとめた。その内容の中心はコーポレートガバナンス・コードの導入と社外取締役の効果であったため、社外取締役のインセンティブに関するデータの収集が当初の予定通りにいかず、この作業を次年度以降に行うために次年度使用額が生じた。次年度はデータの購入、データ入力の補助者の雇用などに資金を使用する予定である。
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