2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K03810
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / 企業金融論 / 取締役会 / 機関投資家 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年6月に制定されたコーポレートガバナンス・コードは上場企業に独立社外取締役2名以上の選任を求め、ほとんどの企業がこれに従い、社外取締役を増員した。この結果、日本の上場企業においても複数名の社外取締役選任が浸透した。本年度はこのような日本におけるコーポレートガバナンス改革の影響を検証するために、企業業績の国際比較を行った。日本のコーポレートガバナンス・改革の影響を検証するために、日本企業のみを分析対象とした場合、全ての企業が改革の影響を受けているために、比較検証が難しい。そのため、日本企業の業績を海外の企業と比較することにより、改革の効果を、具体的にはより株主を重視した経営になったのかを検証した。2012年から2019年の30カ国1938社を対象とした分析の結果は、コーポレートガバナンス改革以後も依然として日本企業の収益性やリスクテイクが国際的にみて低水準であることを示していた。ROAやROEやトービンのqは2012年から2015年にかけて向上したものの、その後は向上しておらず、コーポレートガバナンス改革後も海外企業よりも業績は劣っていた。また利益率の分散で測ったリスクテイクも、先行研究と同様に国際的に見て低水準であった。これらの結果は、コーポレートガバナンスに関する規制の強さ、雇用の柔軟性をコントロールしても同様であった。以上の結果は、コーポレートガバナンス改革が日本企業を過度に株主至上主義にしたとは考えにくいことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
社外取締役のインセンティブとあわせて、コーポレートガバナンス改革の効果を計測することを目指しているが、近年ESG投資やCSR経営などの分野に注目が集まっており、それらに対して社外取締役が与える影響も検討する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
国際比較により、これまでの研究とは異なる角度から企業統治改革の影響を検証できた点では順調に進展していると考えている。一方で、取締役会が企業経営に与える影響をより多角的に見るために、CSRやSDGs、環境投資に与える影響を検証する必要がある。今後はそれらに関するデータを収集し、分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
本年度は昨年度までに作成したデータベースに基づき、その成果を国際比較としてまとめた。その過程で、社外取締役が企業経営に与えた影響をより幅広く検証するためには企業業績のみならずCSR活動や環境投資などを検証する必要が生じた。このデータ作成作業を次年度以降に行うために次年度使用額が生じた。次年度はデータの購入、データ入力の補助者の雇用などに資金を使用する予定である。
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