2021 Fiscal Year Research-status Report
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17K03810
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (60454469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 企業金融論 / 企業統治 / 取締役会 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は取締役会構成が中期経営計画に与える影響について実証的に検証した。中期経営計画は3~5年程度先の具体的な業績目標とそれを実現するための経営計画をまとめたものであり、経営者交代のタイミングに影響を与えるなど、日本企業の経営において重要な位置を占めている。本研究では、社外取締役が中期経営計画の策定において、株主の利害に沿った経営の促進、経営者の規模拡大志向の抑制、経営者の楽観バイアスの排除、情報開示の促進の役割を果たすと考え、社外取締役が数値目標設定項目、数値目標、計画の分量に与える影響を実証的に検証した。ただし、社外取締役などのコーポレートガバナンス・メカニズムが企業行動や業績に与える影響を実証的に分析する際には内生性の問題に直面する。そのため本研究ではCGコード制定に伴う社外取締役の増加に着目し、差の差の分析、操作変数法を用いて、社外取締役人数の変化が中期経営計画の策定に与える因果的効果を推計することを試みた。日経225もしくはJPX400に含まれる404社を対象とした分析の結果は、社外取締役が中期経営計画の設定に影響を与えていることを示していた。社外取締役が増員されると中期経営計画においてROEに数値目標が設定される確率が上昇し、過去の売上高成長率と比較した目標売上高成長率がより低く設定されていた。また、中期経営計画の発表資料の量が、社外取締役が増えた企業で増える傾向も見られた。これらの結果は社外取締役が経営計画の策定に影響を与えており、日本においても重要な役割を果たすようになったことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では2015年のコーポレートガバナンス・コードの実施を契機とした、社外取締役の変化について検証している。しかし、コーポレートガバナンス・コードはその後も改訂されており、それらの変化を加味した分析を行う必要が生じた。そのため、当初の予定よりも進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、前年度までに拡張したデータを利用して、分析を進めていく。基礎的な分析を行った後に、論文を執筆し、ワークショップなどで発表する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は昨年度までに作成したデータベースに基づき、社外取締役の中期経営計画に与える影響を検証した。その過程で、社外取締役が企業経営に与えた影響をより幅広く検証するために、CSR活動や環境投資などに関するデータも作成する必要が生じた。また企業業績がコロナウィルス拡大により大きな影響を受けたため、その点を考慮する必要も生じた。このデータ作成作業を行うために、次年度使用額が生じた。次年度はデータの購入、データ入力補助のための雇用に資金を使用する予定である。
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