2023 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Study on Incentives for Outside Directors
Project/Area Number |
17K03810
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 卓爾 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 教授 (60454469)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コーポレートガバナンス / 社外取締役 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は社外取締役が政策保有株の売却に与える影響を実証的に分析した。政策保有株、特に持ち合い株式は経営者のエントレンチメント手段になっていることが示されている。そのため、コーポレートガバナンス・コードでは政策保有株の見直しを取締役会において行うことが求められている。社外取締役は、社内取締役よりも経営者から独立した立場であり、経営者に企業価値向上に結び付かない政策保有株の売却を求めると考えられる。この点を検証するために2011年度から2019年度の東証1部上場企業の政策保有株に関するデータベースを作成し、社外取締役が政策保有株の売却行動に与えた影響を実証的に検証した。固定効果モデルを用いた分析の結果は政策保有株の売却が年々増加していること、ROEが低い企業、借り入れの多い企業が政策保有株を売却していることを示していた。また、相互保有、いわゆる持ち合い株の売却確率は片側保有の場合よりも高かった。以上のような傾向を考慮しても、社外取締役人数はプラスに1%水準で有意な効果をもっており、社外取締役が多いほど、政策保有株の売却確率は高かった。社外取締役の効果は保有側企業だけでなく、被保有側企業でも見られた。社外取締役が多く在籍している銘柄の株式はそうでない企業よりも売却されやすい傾向がみられた。ただし、これらの結果は逆の因果や見せかけの相関の可能性がある。この点を検証するために、コーポレートガバナンス・コードによる外生的な社外取締役が増加に注目した分析も行い、同様な傾向がみられることを確認した。コーポレートガバナンス・コードに伴い社外取締役が大幅に増加したが、これまでその効果に関しては懐疑的な研究が多かったが、本研究の結果は社外取締役がポジティブな影響を与えていることを示している。
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