2018 Fiscal Year Research-status Report
Europe's Diversification of Banking Regulation: Verification of Regulatory Diversity through Historical Archives of the UK and France
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17K03834
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐藤 秀樹 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (20452112)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イングランド銀行 / フランス中央銀行 / 銀行規制 / プルーデンス政策 / アーカイブズ研究 / 欧州銀行規制 / 国際銀行規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の本研究は、①海外、国内での学会発表、②論文執筆、③海外での内部資料収集、そして、④海外での研究者、当局者との研究交流において実施された。 まず、1979年の英国銀行法に関する基礎研究を論文にまとめ、その発表を6月に台北の国立台湾大学にて行った。アジア太平洋EU学会報告である (European Union Studies Association Asia Pacific, Annual Conference 2018, National Taiwan University)。座長並びにフロアから貴重なコメントを頂き、海外のEU研究者との分野をまたいだ研究交流が可能となった。その成果を、論文にまとめて発表した。 次に、欧州が取り組んでいる銀行規制の調和、すなわち銀行破綻処理と預金保険制度の一元化に向けた政策を分析し、2018年3月に実施した米シカゴでの国際学会報告を基に、論文に取りまとめた。この成果を、5月に日本金融学会春季大会の英語セッションにて報告した。 さらに、10月にフランス・パリのフランス中央銀行の歴史文書室にて国際金融規制に関する内部資料を閲覧し、1980年代の金融規制の調和に向けた各国金融監督当局の政策収斂の初期状況について貴重な史料を収集した。そして、Paris School of Economicsの研究者、フランス中央銀行上層部との研究交流を実施した。 そして、同月にイギリス・ロンドンにてイングランド銀行歴史文書室、英国立公文書館にて、1979年銀行法と1980年代の同法のレヴューに関する内部資料を閲覧・収集した。さらに、LSE教授、Cass Business School教授との研究会合の機会を得て、論文内容について議論を行った。また、欧州銀行機構(EBA)、及びイングランド銀行の専門家との会合も行い、実りのある研究交流を行うことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初念頭に置いていたイギリスでの史料収集については、イングランド銀行のみならず英国公文書館においても政府側(財務省側)の見解を入手できたことは収穫であった。これまで収集したイングランド銀行のアーカイブズを見直し、国際学会で報告し、論文にまとめたことで、次の課題が明確となった。また国内の先生方から論文へのコメントを頂いた。 一方、フランス中央銀行の歴史文書室では、史料収集にあたり、事前にアーキヴィストの方に目録を送って頂き、検討を重ねた。銀行規制及び監督政策の分野では、特に1980年代のバーゼルを基盤とする国際金融規制の萌芽期についての文書箱が多く所蔵されていたことが判明した。その文書群の蓄積は、フランスが積極的に国際金融規制に関与していたことを反映している。そのため、史料収集においてもその内容に重点を置いた。フランスが、銀行規制の情報収集を行うにあたり、国際的側面―つまり国際協調を見据えた視点―に焦点を合わせていたことを現地の文書室で実感した。 また、英仏での研究者、当局者との研究打合せを合計9回、行うことが出来た。これは研究のネットワークを構築する上で基盤となる有難い機会であった。研究者からは歴史的視点、現状の政策へのフィードバックなど銀行規制に関する、①英国固有の銀行規制の特質、②フランスの銀行規制と歴史的背景、③欧州の協調体制の展開、という3点から実りのある議論を行った。特に①に関しては、英国が有力な国際金融都市であるロンドン・シティにいかに効率的に向き合い、政策を策定していたかについての興味深い視点を学ぶことが出来た。 さらに、現在の欧州の銀行規制の協調政策に対する実務的観点を、当局者の立場から聴き取ることを通して、その観点と筆者のアカデミックな立場との差異や共通点を模索する有意義な議論を行えた。この研究交流から、筆者は自身の歴史分析に現代性を与える示唆を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、本研究の総括として、①学会報告と論文のブラッシュアップ、②現地での史料収集の総括に重点を置きたい。 第1に、日本金融学会2019年度春季大会における経済史セッションにて報告する機会を与えて頂いている。これまでアーカイブズを使って1979年英国銀行法についてまとめているが、それを見直し、英国における銀行規制のスタンス、方針にかんする歴史的知見を通して、現在の欧州銀行同盟への示唆について検討する報告を行う。第一線の討論者のご示唆、及びフロアからの質疑応答を通して、この論文に磨きをかけることを重視したい。アーカイブズに必要に応じて立ち返り、基礎文献のチェックも継続することで、文章を改訂していくこと、英語表現も工夫していくことを眼目とする。その作業を通して雑誌に投稿することを大きな目標とする。 第2に、これまで収集した英仏の内部文書を精査する。これらを基に新たに1本の論文執筆に取り組みたい。英国に再度研究出張し、補完的にアーカイブズを収集することを予定している。1980年代の英国銀行法(1987年)に向けたレヴュー、これまで集めたフランス中央銀行所蔵の銀行規制の文書箱史料を再検討し、キーパーソンの講演録、議事録の解読を通して、萌芽期の国際金融規制の展開を精査する。現地における総括的視座からの史料の閲覧に取り組み、論文を完成させ、本研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
大学での基盤研究費により洋書等を一部購入出来たため。次年度使用額については、計画している海外での研究旅費に使用する。
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