2017 Fiscal Year Research-status Report
17-19世紀におけるヨーロッパ繊維産業の繊維横断的研究
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17K03858
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
竹田 泉 成城大学, 経済学部, 教授 (20440216)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 繊維産業 / 工業化 / 綿工業 / ヨーロッパ / イギリス / ファスチアン |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、工業化以前のヨーロッパの繊維産業の連関を探るために、まず、本研究が手がかりとする織物「ファスチアン」の製造業の歴史を中世イタリアまでさかのぼって分析した。特に、これまで別々に行われてきたファスチアンに関する先行研究をどのように関連させて理解することができるのかといった点に重点を置いた。 第2に、以上の分析を踏まえて、それぞれの地域、時代の「ファスチアン」の特徴を、史料・文献から整理し、「ファスチアン」と呼ばれていたものにも様々な種類があることを確認し、それぞれの異なる「ファスチアン」がどのように製造されていたのかを、原料や技術の観点から整理した。特に、ファスチアンが、多くの場合、複数の繊維で作られている点に着目した。一般的に「ファスチアン」は亜麻と綿の混織布と理解されているが、実際は他の繊維が用いられている場合があり、「ファスチアン」の定義を再考することの必要性を示した。 この点の分析を深めることは、繊維産業を繊維別に考察することの限界を乗り越えることにつながる。モノとしてどのような性質をもった織物が製造されたのか、またそうした性質を生み出すために具体的にどのような原料や技術が採用されたかを探ることは、ヨーロッパの繊維産業の連関を、地域的・歴史的広がりをもって明らかにする作業となる。2017年度はそのための準備的な考察を主に行ったということになる。 研究会は2回行った。一つは、同様の関心を持つ国内外の研究者との共同ワークショップであり、今後の共同研究の可能性を議論した。もう一つは、繊維鑑別の専門家との研究会であり、それぞれの天然、化学繊維の特徴やそれを加工する技術から、最終的な織物の特徴をどのように生み出すことができるかについて理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究調査、研究会開催はほぼ計画通り行うことができたが、予定していた史料・資料調査は、以下の理由により遅れている。1)海外への研究調査旅行を病気のため行うことができなかったため。2017年度に予定していた分は2018年度以降に行うことにする。2)オンラインで利用可能な図書館や史料館が提供するサービス(史料検索、データの購入)を、所属大学の会計処理の問題で利用できなかったため。他の方策を探ったり、一部自費で行ったりしたが、限界があった。
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Strategy for Future Research Activity |
関連する分野の研究者との研究会や、それを通じての情報共有を積極的に進める。 国内外の博物館、資料館のキュレーターと連携をとりながら、織物や衣服の現物調査を行う。 オンラインで図書館や史料館が提供するサービスを効果的に利用する。そのためには、大学の事務スタッフと協力し、「現在までの進捗状況」で書いた問題を解決する必要がある。
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Causes of Carryover |
予定していた史料・資料調査が以下の理由により十分に行うことができず、次年度使用額が生じてしまった。1)海外への研究調査旅行を病気のため行うことができなかった。2017年度に予定していた分は2018年度以降に行う予定である。2)オンラインで利用可能な図書館や史料館が提供するサービス(史料検索、データの購入)を、所属大学の会計処理の問題で利用できなかった。他の方策を探ったり、一部自費で行ったりしたが、限界があった。本研究遂行のためには必要な調査であるので、今後は、事務スタッフと協力しながら、会計処理の改革を要求していきたい。
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