2022 Fiscal Year Annual Research Report
A reinterpretation of the history of European textile industry in the 17th-19th centuries
Project/Area Number |
17K03858
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
竹田 泉 成城大学, 経済学部, 教授 (20440216)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 繊維産業 / イギリス産業革命 / アイルランド / リネン / 奴隷 / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、綿・絹・羊毛・亜麻といった繊維の「別」ではなく、色柄や手触りといった繊維品のモノとしての性質に着目することによって、産業革命前後の時代のヨーロッパ繊維産業史を再解釈することを目的としている。そこで、18世紀のランカシャー綿業を分析の軸とし、主に次の2点について調査・考察することによって、繊維を横断するヨーロッパ繊維産業史の新しい理解を提示することを試みた。第1に、中世イタリアの繊維製造と産業革命期イギリス綿業との関係を探ること、第2に、18世紀のイギリス製綿布と、同時代にヨーロッパ各地で製造される亜麻布(リネン)の競合関係を明らかにすること、である。 第1の点では、産業革命前からランカシャーで製造された「ファスチアン」と呼ばれた布の表面加工に着目し、同様の特徴が中世のイタリアからその後のヨーロッパ大陸諸地域における繊維製品にも見られる点を示し、それらの連関を明らかにした。表面加工のグローバルな連関という問題関心は、共同研究を通じて他の研究者と共有し、ユーラシアの他地域に対象を広げて研究を継続している。 第2の点では、奴隷衣服用の布生産をテーマとした共同研究に参加し、アイルランドを担当した。18世紀アメリカの英領植民地には、イギリス製だけでなくヨーロッパ各地で製造された繊維製品が輸出されたが、この研究を通じてヨーロッパ各地の繊維製品の競合関係の具体的な様相が明らかとなった。さらには、アイルランドの粗質リネン生産が、イギリスとの複雑な政治関係のもとで押し進められた点や同時代の啓蒙思想の影響を受けた点についても研究を進めているが、これは本研究で新たに見つかった課題である。
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