2019 Fiscal Year Research-status Report
M&A実施企業の組織マネジメント:トップの関与が研究開発活動にもたらす影響の解明
Project/Area Number |
17K03893
|
Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
篠崎 香織 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (50362017)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 製品アーキテクチャ / クローズド・モジュラー / 組織能力 / 共創 / 選択と集中 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、M&Aにより獲得した資源を活用するための組織マネジメントのあり方を明らかにすることである。分析対象企業は、医療用モニター分野に参入して以来、複数のM&Aを行っている。一件目の被M&A主体は商品企画・開発・製造・品質管理・マーケティング・販売・サービスに至るフルラインの事業体で全機能を持っている点で、M&A実施企業と共通していた。一方その後に実施したM&Aでは、特定分野のモニターの研究開発部隊を獲得している。 平成29年度から30年度は、分析対象企業が最初に行ったM&Aに注目し、特許データを用いて当該企業と被M&A主体の出願および登録状況を分析した。その結果、研究開発分野の選択と集中が進んでいることがわかった。 平成31年(令和元年)度は、二件目のM&Aまで分析範囲を広げ、被M&A主体から獲得した技術がどのように活用されているのか、製品アーキテクチャの観点から分析した。最初のM&A対象主体は、当該企業の活動よりもより広い範囲、すなわち検査・診断分野に加え、手術室分野での活動経験があったため、ソリューションビジネス事業に進出するきっかけになった。一方、後者のM&Aは当該企業が10年前から中期経営計画の中でビジョンとして描いていた特殊分野の強化に関連するもので、M&A後は基幹事業として短期間で複数の製品化が進んだ。これらによりM&A実施企業はクローズド化をさらに進めることとなった。 モニター技術に関するM&Aという点で共通するケースであるが、分業を行いながらも、使用する技術は相互に活用できる体制を敷いているケースと、お互いの技術と経験を融合させて製品化につなげているケースがあり、対象主体の保有能力によって協働の仕方が異なることを明らかにした。この結果は分析対象企業には被M&A主体と共創可能な組織能力があることを示唆している。今後はこの点についての分析も行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析対象企業が当該分野に参入する時点から現在までに公表されている有価証券報告書、中期経営計画および、プレスリリース等をもとに、主に研究開発活動状況の把握をしてきた。並行してインタビュー調査を行うことを通して、当該企業のM&A実施前後の研究開発体制、獲得した資源の活用状況(知的財産を含む)を明らかにしてきた。 情報ソースの確保とインタビュー協力者の積極的関与により、おおむね順調に進展している。 現在複数の協力者のもとに研究を進めているが、協力が得られるかどうかは、担当者の通常業務外の余力にかかってる。そのため、早めの連絡、依頼が不可欠である。
|
Strategy for Future Research Activity |
記述の通り、本研究の分析対象企業は複数のM&Aを実施している。数年前に行ったM&Aは主力のモニター関連ではなく、モニターにつなぐ、撮影、配信、録画の機能を保有する企業とのものであり、分析対象企業がこれまで行ってきたM&Aとはタイプの異なるものである。今年度はこのM&Aに関する分析を中心に行う。当該被M&A実施企業は一件のM&Aで対象になった被M&A実施主体が保有していた技術を保有しており、分析対象企業からみると一部で重複する技術をもつ状態になっている。この技術が併用されていくのか、どちらか一方の技術を選択していくのかは、経営者の意思決定にかかってくる。そのため、この選択について組織マネジメントの観点から注目していく。 M&Aに関する情報は企業の成長と密接しており、企業からの情報が得にくい。そのため、インタビュー協力者には分析の趣旨を明確に伝えるとともに、公にできる範囲のギリギリを狙ってお話を伺えるようにする。
|
Causes of Carryover |
購入予定であった被M&A実施企業の特許データの支出が不要になったことと(件数が限定的であったため、以前委託した企業から無料提供があった)、速やかに手続きをしなかったためにデータ分析ソフトが購入できなかったこと、さらに年度末に出張ができなかったために、次年度使用額が発生した。 使用計画:データ分析ソフトの購入、調査および研究促進のため旅費、研究発表大会参加費、論文の英文校閲費等の支出を予定している。
|
Research Products
(4 results)