2018 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
17K03921
|
|---|
| Research Institution | Kindai University |
|---|
Principal Investigator |
辺 成祐 近畿大学, 経営学部, 講師 (40737467)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 工程間調整 / 組織間調整 / 調整能力 / プロセス産業 / 鉄鋼産業 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
研究2年目である平成30年度は、これまでの文献・資料の収集・調査、企業の工場及び本社・事業部等の実地調査を踏まえて、研究課題に答えるための、より深い実地調査を行った。具体的には、企業の工場及び本社・事業部等の実地調査を、鉄鋼産業9回、化学産業2回、醸造産業3回行った。さらに、以上の実地調査などの知見を研究成果としてまとめつつ、調査成果の発信を積極的に行った。具体的な成果としては、雑誌論文2本、学術書の一部を出版し、学会報告9回を行った。
平成30年度も、おおむね実施計画通りの成果が得られた。各産業において高級製品を生産する際、工程間で操業パラメータ調整の必要性と、それを実現するための工程間コミュニケーションの手法が分かった。特に、鉄鋼産業では、自動車用鋼板などの高級綱を生産するための組織間コミュニケーション手法に、主にフィードバックとフィードフォワードがあり、前工程の操業データ（公差など）を参考に、後工程でパラメータを調整する能力が一貫品質管理において非常に重要であることが分かった。
例えば、自動車用鋼板の溶融亜鉛メッキ鋼板を生産するためには、各生産工程における厳しい公差管理が求められる。理想的には範囲概念の公差ではなく、ピンポイントの操業目標が実現できればいいが、現実的には公差の幅をいかに狭くするかが、管理目標となることが多い。前工程で公差をクリアした製品が後工程に移動するが、後工程に届いた製品の品質が、前工程の公差をどれぐらいの水準でクリアしたのかについて理解することも、一貫品質管理の重要な管理ポイントとなる。例えば、製鋼工程の公差をギリギリでクリアした製品が、熱延工程もギリギリの水準でクリアした場合、最後のメッキ工程で品質不良になる可能性が高い。操業データを前工程と後工程が共有し、前工程での品質課題を、後工程で修正する作業をするためには、組織間連携が重要である。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展し、今年度もさらに体系的な研究を行う予定である。第一点目に、当初計画した実地調査は、おおむね計画通りに行った。そして前年度につくった企業担当者とのチャネルを十分活用して、フォローアップ調査に加え、研究成果などに関する意見交換も行った。第二点目に、企業現場の調査を重ねることで、各産業・企業における工程間調整、組織間調整の実態がより明確に見え、これに従って各事例をまとめ、一般化の可能性が見えてきた。ここまでの内容を国内、国際学会で発表し、コメントなどを研究に反映している。
|
| Strategy for Future Research Activity |
2019年度の前半には、前年度につづき、技術を導入した新興国企業の製造拠点に対する調査を実施する。鉄鋼産業に関しては、一貫品質管理システムの導入プロジェクトを進めている韓国の現代製鉄唐津製鉄所を訪問し、プロジェクトメンバーを対象にヒアリング調査を行う。調査の焦点は、工程間、組織間の調整能力を構築していくプロセス（本研究の第2の課題）を明らかにすることであり、工程間のコミュニケーション（フィードバック、フィードフォワード）などを中心に調べる。同様の調査を、化学産業、醸造産業でも行い、産業間比較分析を行う。
|
| Causes of Carryover |
2018年9月4日から韓国企業の訪問調査を予定していたが、台風第21号による暴風と大雨により欠航となり、中止となった。当該企業とは、2019年度に改めてヒアリング調査を実施することにした。
|
