2018 Fiscal Year Research-status Report
環境未来都市の価値創造についての理論的・実証的研究
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17K03958
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
所 伸之 日本大学, 商学部, 教授 (90237082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 充 日本大学, 商学部, 教授 (90366550)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 価値創造 / 共創 / イノベーション / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前年度に引き続き当該研究課題に関連した文献、資料の収集とフィールド調査を精力的に行った。このうちフィールド調査に関しては、5月に北九州市を訪問し、北九州市役所政策調整課においてヒアリングを実施した。北九州市は環境未来都市に選定された都市の1つとして精力的に環境政策を推進しており、その取り組みは市内に留まらず中国の環境汚染問題への協力等、海外にも及んでおり、それが北九州市の魅力、価値の増大に貢献している。ヒアリングでは、公害問題の経験から環境都市を目指すに至った経緯や市民・企業との共創における課題等について担当者から説明を受けた。 また、2019年3月にはパナソニックの東京本社を訪問し、同社が横浜市綱島の同社工場跡地で進めているスマートシティプロジェクトについてインタビューを行った。同プロジェクトは、横浜市の推進する環境未来都市プロジェクトの一環として進められており、大学や海外企業なども参加した先進的なプロジェクトである。パナソニックはすでに藤沢市でも同様のプロジェクトを推進しており、環境都市創造のプランナーとしての知見を蓄積している。インタビューでは異業種の企業間の共創のあり方や知的所有権の問題等について説明を受けた。 文献調査については、前年度に引き続き英語文献の収集に努めた。ICTを活用した都市のスマート化は先進諸国のみならず発展途上国においても重要な課題となっており、豊富な資料、文献が存在する。それらを丹念に読み込み、当該研究課題に関連した知見を獲得する作業は時間と労力を要するが、フィールド調査における理論的なフレームワークを構築する上で欠かせない作業である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は文献サーベイとフィールド調査を組み合わせて進めることを予定しており、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。すなわち、文献サーベイに関しては当該研究課題に対する社会的な関心の高さもあり、豊富な資料、データが蓄積されている。それは邦語文献に限らず英語文献についても同様である。文献サーベイの目的は、事実関係の正確な把握とフィールド調査を行う際の理論的フレームワークの構築にある。いずれの作業も2年間、継続して行っており、当初の予定通りに進行している。 一方、フィールド調査に関しては、現在までに3か所(行政機関2、企業1)を訪問し、ヒアリングを行っている。富山、北九州、横浜の3地域は環境未来都市の推進において国内外の注目度が高く、その取り組みも先進性を有している。これらの地域を訪問し、ヒアリングを通じて担当者から有為な知見を引き出すことは、当初の目標であり、それが実現できたことは大きい。その一方で、フィールド調査がすべて順調に進んでいるかと言えば、必ずしもそうとは言えない状況にある。当初の計画では、もう少し多くの地域を訪問する予定であったが、先方の都合もあり、実現できていない所も存在する。特に東北地方の東日本大震災の被災地で環境未来都市に選定されている岩手、宮城、福島の各都市を訪問できていないことは本研究課題の遂行に当たって課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行は3年間の期間を想定しており、本年度は最終年度に当たる。従って、本年度は研究課題の取りまとめと成果の公表を視野に入れた活動を行っていくことになる。まず、最終年度も本研究課題の2つの柱である文献サーベイとフィールド調査を継続して行っていく。このうち、文献サーベイに関しては、これまで行ったフィールド調査で得られた知見を精査し、理論的なフレームワークの再構築を目指す。すなわち、理論と実践の往復運動を経て、より精緻化されたフレームワークの確立を図りたい。 一方、フィールド調査に関しては、未だヒアリングが実現していない地域に積極的にアプローチし、ヒアリングの実現を目指したい。特に岩手、宮城、福島の3地域の調査の実現は是非、実現したい。また海外調査も計画しており、欧州(特にドイツ)の環境先進都市を訪問し、データの収集やヒアリングを行いたいと考えている。 さらに、研究成果の公表についても準備したい。研究成果の公表に関しては、昨今の情勢に鑑み、英語で海外に発信することが重要であると考えており、権威ある査読ジャーナルへの投稿に向けて、論文の執筆作業に取り掛かる予定である。また学会やシンポジウム等、成果発表の機会を捉えて積極的に研究成果の発信を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、岩手、宮城、福島の各都市を訪問し、環境未来都市の推進プロジェクトについて担当者から説明を受ける予定であったが、スケジュールの調整が上手くいかず、これらの地域での調査を行うことが出来なかった。次年度使用額が生じた理由は、当初の計画で計上していたフィールド調査関連の費用が使用されなかったことによるものである。従って、これらの未使用分の予算を次年度に繰り越し、本年度はフィールド調査の日程調整をより早い段階から進めることで、東北3県での調査の実現を図りたいと考えている。
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