2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K03962
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
玄場 公規 法政大学, イノベーション・マネジメント研究科, 教授 (80313039)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イノベーション / 技術戦略 / 技術経営 / スマイルカーブ / 経営戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の製造企業の収益性は近年低下している。この原因として、研究開発投資の効率性の低下があるとされている。しかしながら、日本の製造企業の研究開発投資の効率性が低下していることを示す実証的な分析結果は未だ十分とは言えない。このような問題意識から、本研究では、近年の日本の製造企業の収益性に関して、研究開発投資及び設備投資、さらには各産業の取引関係に関する豊富な定量データを元に実証分析を行うものである。昨年度までの分析により、製造業全体としては、研究開発投資比率の係数は有意に負の値を示したものの、業種別では、医薬品、生産用及び業務用機械器具製造業の研究開発比率の有意に負となったものの、ほとんどの業種の企業については有意な結果が得られず、また、有意に正の値を示す業種もあることが分かった。設備投資については製造業全体において、有意ではないものの、正の値となった。また、業種別の分析においては、ほとんどの業種において正の値となった。これらの結果から、業種別の分析では大きく傾向が異なり、業種別による収益性に関する実証分析の蓄積が必要であることが明らかになった。そのため、2019年度においては、各産業の取引関係に着目し、産業連関表のデータを用いてBtoB率という指標を導入し、分析を行った。B to B率は、BtoB率=内製部門計/(内製部門計+国内最終需要計)で算出する指標であり、各産業の取引関係の差異を定量化することが可能である。分析の結果、日本の製造業において、B to C率が高い業種ほど収益性が低く、B to B率が高い業種は収益性が高くなる傾向になることが分かった。この分析結果は、横軸をバリューチェーンの順序、縦軸は付加価値としてグラフ化すると、U字型の曲線を描けるとする、いわゆるスマイルカーブと整合的な実証結果と評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、産業別の技術機会に着目し、日本の製造企業の研究開発投資及び設備投資と収益性との関係を豊富な定量データ及び詳細な事例分析を元に実証分析を行うものである。2019年度は、研究の最終年度として、日本の全製造業を対象に、川上産業と川下産業の収益性が高く、川中産業の収益性が比較的低くなるというスマイルカーブに関する定量分析を行った。研究目的に合致した研究成果を提示しており、概ね順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の分析の結果、製造業全体としては、先行研究と同様に研究開発投資比率の係数は負の関係を示した。しかしながら、業種別では、医薬品、生産用及び業務用機械器具製造業の研究開発比率の有意に負となったものの、ほとんどの業種の企業については有意な結果が得られず、また、有意に正の値を示す業種もあることが分かった。設備投資については製造業全体有意ではないものの、正の値となった。また、業種別の分析においては、ほとんどの業種において正の値となった。これらの結果から、研究計画時における仮説の通り、製造業全体の分析と業種別の分析においては定量分析の結果が大きく異なり、業種別による実証分析の蓄積が必要であることが分かった。さらに、2019年度においては、産業の取引関係に着目して、産業連関表のデータを用いて、BtoB率という新しい指標を導入して、各産業の取引関係が収益性に大きな影響を与える可能性を定量的に実証した。ただし、これは単年度のデータを用いた分析であり、今後さらにデータを収集して実証分析の蓄積が不可欠と考えられる。また、定量的な分析結果に加えて、詳細な事例分析により、研究を推進していくこととする。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスによる出張自粛の関係で共同研究者との打ち合わせがキャンセルとなった。次年度においては、この残額により、共同研究者との今後の研究計画の打ち合わせを行う計画である。
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